学習指導要領(平成29・30・31年改訂)では、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力として「主権者として求められる力」を挙げ、小学校・中学校・高等学校の各段階を通じて教科等横断的な視点で育成することを目指しています。
主権者教育では、正解が一つに定まらない課題に対し、子どもが自分の意見を持ちつつ、議論を重ねながら他者の意見と折り合いをつけ、納得解を見いだしながら合意形成を図っていく過程が重要とされています。
これは、学習指導要領が見据えた2030年の未来社会を生きる子どもたちにたちに必要な資質・能力の育成と重なるところです。
前半は、学校教育に関する主権者教育の目的や背景をまとめ、後半では、主権者教育で重要とされている体験や力が教職員にも必要であると考え、新たな取り組みとして立ち上がった「School Voice Project」に関してご案内をします。
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主権者教育の目的
単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力を身に付けさせること
現状の課題
■満18歳への選挙権年齢の引き下げにより、小学校・中学校からの体系的な主権者教育の充実を図る必要が出てきた。
■国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していくことが求められている一方で、日本は社会を変えることへの意識や主体性をもった人の割合が、諸外国と比べても低いことがうかがえる。
「若者の意識調査(13−29歳)」(n=1134)
私の参加により,変えてほしい社会現象が少し変えられるかもしれない
日本/そう思う32.5% そう思わない51.0%
アメリカ/そう思う63.1 そう思わな26.3、イギリス/そう思う54.9 そう思わない30.6
社会をよりよくするため,社会問題の解決に関与したい
日本/そう思う42.2% そう思わない43.6%
ドイツ/そう思う75.5 そう思わない17.4、アメリカ/そう思う72.6 そう思わない20.0
将来の国や地域の担い手として積極的に政策決定に参加したい
日本/そう思う33.2% そう思わない53.2%
アメリカ/そう思う69.6 そう思わない24.2、イギリス/そう思う61.6 そう思わない27.9
出典:内閣府,我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)
これからの学校教育
AIでは為し得ない「人間ならではの強み」を発揮できるようにしていくこと
どのような未来をつくっていくか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくかという目的を自ら考えだしたり、答えのない課題に対して、多様な他者と協働しながら目的に応じた納得解や最適解を見いだしたりすることができる人間の強みを、教育課程全体で発揮できるようにしていくことが求められている。
2030年の未来社会を生きる子どもたちに必要な資質・能力の育成
正解が一つに定まらない論争的な課題に対して、児童生徒が自分の意見を持ちつつ、異なる意見や対立する意見を整理して議論を交わしたり、他者の意見と折り合いを付けたりする中で、納得解を見いだしながら合意形成を図っていく過程が重要。これは、子どもたちに必要な資質・能力の育成とも重なる。
主権者教育:「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱
学びに向かう力・人間性等
よりよい社会の実現のために主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される人間としての在り方生き方についての自覚
知識・技能
選択・判断の手掛かりとなる概念や理論,及び倫理,政治,経済等に関わる諸課題に関して理解するとともに,調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能
思考力・判断力・表現力等
現代の諸課題について,事実を基に概念等を活用して多面的・多角的に考察したり,解決に向けて構想したりする力,合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力
出典:
*文部科学省,今後の主権者教育の推進に向けて(最終報告),令和3年3月31日
*幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申) 別添資料
「School Voice project」のご案内
主権者教育の目的を達成するためには、まず大人である教職員が実感ある体験を通して、子どもたちに育みたい力を身につけていくことも必要です。そういった背景がある中、立ち上がったプロジェクトをご紹介します。
School Voice projectとは?
学校で働く大人たちの声は、教育政策を決める行政や議会、市民・地域の方、保護者にはほとんど届きません。なぜならその多くは、教職員の胸の内や職場内に留められたままだからです。「School Voice Project」は、子どもたちの思いが大切にされる教育をつくっていくためには、大人たちの思いも大切にされる必要があると考えスタートしたプロジェクトです。
呼びかけ人武田緑さんの想い
【教職員の皆さんへ】学校現場の声を見える化し、対話の文化をつくるオンライン・プラットフォームをつくります。
School Voice Projectでは、2021年9月26日までクラウドファンディング実施中!
教職員の声を社会に! 学校現場の声を見える化するプラットフォームをつくりたい!