
※こちらの記事は、ポッドキャスト「もしも私が教育長なら」との連動企画です。併せてご活用ください。
可視化の先にある「対話」や「支援」について考える

学校現場では、子どもたちの学びや生活の状況をよりよく理解し、必要な支援につなげるために、さまざまなデータが活用されています。
一方で、「データを集めること」や「グラフ化すること」自体が目的になると、必ずしも現場の改善にはつながりません。大切なのは、データをどのように読み取り、対話や意思決定、具体的な支援につなげていくかという視点です。
今回の「学校現場を動かすデータ利活用についてざっくばらんに話す会」では、教育データ利活用やダッシュボード活用をテーマに、データをどのように現場の意思決定や対話につなげていくのかについて議論しました。
(※本イベントは一般社団法人かたりすとのポッドキャスト「もしも私が教育長になるなら」の公開収録として実施)
ゲストには、教育データ利活用に関わる研究・実践を行う井澤萌さん、文部科学省で学校教育政策に携わり、現在はスタンフォード大学教育大学院に留学中(※収録時)の野﨑光寿さんを迎えました。
今回は、お二人が実際にダッシュボードをつくられた経験を起点に、教育現場でデータをどのように活かしていくのか、また現場との対話や必要な支援につなげるためには何が大切なのかについて、ざっくばらんにお話しいただいたことをまとめました。
データ利活用は「見るため」ではなく「考えるため」のもの

教育におけるデータには、テストの点数や出欠状況など数値で表せる「定量データ」だけでなく、子どもや教職員への聞き取り、日々の観察などの「定性データ」も含まれます。
その上で、データ利活用について「達成したい目標に向けて、重要な要素をモニタリングするためのもの」という視点を紹介。
つまり、まず「何をよくしたいのか」「そのために何を見る必要があるのか」という目的や仮説があり、その確認や改善のためにデータを活用するという考え方です。
単純に多くの情報を集めて可視化するのではなく、「この変化はなぜ起きているのか」「次にどんな行動が必要なのか」を考える材料としてデータを見ることが重要になります。
先生は、すでに高度なデータ活用を行っている

データ利活用というと、ICTツールやダッシュボードのような仕組みを思い浮かべることがあります。
しかし、データ利活用は必ずしもダッシュボード等の仕組みを活かしたものに限ったものではないことも指摘されました。
学校現場では、先生方が日々、子どもたちの表情や発言、学習の様子、友人関係の変化など、さまざまな情報を受け取りながら、一人ひとりの状況を判断しています。
そうした意味で、先生方はすでに多くの情報を統合し、意思決定を行う「データ活用の実践者」でもあります。
だからこそ、単純にテストの点数やドリルの進捗など、先生方が既に把握している情報を可視化するだけでは、「知っていることを別の形で表示しただけ」になってしまう場合があります。
データ活用で大切なのは、先生方の経験や専門性を置き換えることではありません。
現場が持っている知見を尊重しながら、学校全体や教育委員会など、より広い視点で状況を共有したり、必要な支援を考えたりするための材料として活用することです。
ダッシュボードは「数字を並べるもの」ではなく、共通理解をつくるもの

ダッシュボードとは、特定の目的に向けて必要なデータを整理し、関係者が状況を把握しやすくするための可視化ツールです。
ただし、重要なのは「作ること」ではなく、「その後どう活用するか」です。
例えば、学校や教育委員会がデータを共有することで、
- どこに支援が必要なのか
- どんな変化が起きているのか
- 他の事例から参考にできることはあるか
といったことを対話するきっかけになります。
データは答えを自動的に出してくれるものではなく、関係者が状況を理解し、考えるための共通の材料になるものです。
現場の知恵とデータを組み合わせる

教育現場では、先生方が日々、子どもたちの様子を見ながら、多くの情報をもとに判断しています。
そのため、データ活用は「現場の判断を置き換えるもの」ではなく、「現場の判断を支えるもの」として考えることが重要です。
一方で、学校全体や自治体全体で状況を見る際には、データが役立つ場面があります。
例えば、
- 特定の傾向がある学校や学年を把握する
- 平均値だけでは見えにくい違いに気づく
- 必要な場所へ支援やリソースを検討する
など、現場の知恵や感覚だけでは捉えにくい部分を補う役割を果たします。
データ活用で大切なのは「解釈する時間」

データを見る上で重要なのは、数字そのものではなく、その背景を考えることです。
同じ結果でも、「なぜこの数字になっているのか」を考えることで、必要な対応は変わります。
そのためには、データを見る人同士が対話し、
- 現場では何が起きているのか
- 数字には表れていない背景は何か
- 次に試すことは何か
を一緒に考えるプロセスが欠かせません。
定量データと定性データを行き来しながら、「なぜそうなっているのか」を考えることが重要です。
焦点を絞ったデータ活用へ

最後に共有された大切な視点は、「すべてをデータ化しようとしない」ということでした。
データは万能ではなく、目的に応じて使うことで力を発揮します。
まずは、
- 何を改善したいのか
- そのために必要な情報は何か
- その情報を見た後、どんな行動につなげるのか
を明確にすること。
仮説を持ち、必要なデータを見ながら、現場と行政、関係者が対話を重ねていく。
学校におけるデータ利活用は、数字で人を見るためではなく、子どもたちや学校の状況をより深く理解し、よりよい支援につなげるための手段なのだと感じる時間になりました。
参考
▼教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況ダッシュボードhttps://lookerstudio.google.com/embed/reporting/88976a7b-7d92-4471-b562-756d82e3bee8/page/p_kprqbnd6sd
▼ダッシュボードに関する記事
https://note.com/edudata/n/n5dda46b53261
▼デジタル庁:校務DXの取組に関するダッシュボード
https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/school-affairs-dx
(文責:たかのまさこ)
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