Story
2012年。iPhoneの写真で過去に戻ってみると、父が人生を終えようとしている。私は愛着のあった学校を離れ、新たな場所で自分を試す決心をしていた。未来を想像、なんてしなかった。ずいぶん昔、とも、昨日のよう、とも思える。
今、2022年の私。モヤモヤを抜けこんなに楽しい毎日を送っているなんて。あの頃の自分に伝えたい、でもガチガチだったから、信じないだろうなあ。
そして2032年、64歳になっている。あっという間に過ぎそうではあるけれど、10年がしっかりと分厚いことも知っている。どんな世界がそこにあるのだろう?
2022年にはまだあった、教室の壁、教師たちの価値観の壁。
協働と個別、密と距離、やりがいと忙しさ、若手とベテラン、アナログとデジタル。二項対立になりがちでアクセルとブレーキを同時に踏みモヤモヤと煙が上がる葛藤の時代・・・。
あったなあ、懐かしい。コツコツと目の前の状況に丁寧に向き合っているうちに、気づいたら壁のようなものは低くなって、それを軽やかに飛び越えることが普通、になってきた。
多様性に満ち溢れ、どうしたらみんなが鎧を脱いで「らしく」いられるか考え合う時代。これが寛容な世の中ってことかな。
学校はそれぞれが自分らしくいるから過ごしやすい。オンラインも便利だけどリアルもやっぱりよい。そして、学校って、昔も今も、いろんな子が集まるからおもしろい。
今あるもの、人、枠組みというギフトを使って、制限ばかりの中、知恵を絞ってみんなでつくっていく毎日って、面倒くさい。でもなんてクリエイティブなのだろう。それに向き合う本気の大人の姿を間近で感じてきた子どもたちは、ICTや新しい感覚を上手にミックスして、たくましい大人になっていく。
私も止まらずにチャレンジを続け、こんなテーマをもっているかな。「アナログの良さ再発見」!
プロフィール
広木敬子さん
公立小学校校長
教員であることはいつも楽しく、忙しく、時に凹んでも結局糧にして、試行錯誤やゆらぎの中に安定を探しながら、夢中になれる問題解決学習のように30年間続けてきました。主体的な学び手や、子ども主役の授業・学校生活に興味があり、「読書家の時間」にたどりつき「大人のブッククラブ」も続けています。校長になったときは戸惑いましたが、想像以上に子どもと近くなれる毎日を楽しんでいます。
編集後記
相対化することで、これまでの価値が浮かび上がってくることがあると思います。10年後(もっと近い未来?)、これまで二項対立で語られがちだったものが、こちらの良さもあちらの良さも融合して、子どもたちの可能性が広がっている世界になっていることを想像してとてもワクワクしてきました。
(編集/たかのまさこ)
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