教育格差が社会問題として注目されつつありますが、日本の義務教育は他の国と比べてどの程度不平等なのでしょうか?今回はOECDが実施した「国語の成績の学校間と学校内のバラツキ」に関する国際比較を紹介します。
*この記事は「スゴ論」とのコラボ記事です。詳細は文末へ
結論
日本はOECD加盟国諸国平均よりも不平等レベルが高い国語の成績に関して学内の成績のバラつきはOECD加盟国諸国よりも小さい(75カ国中39位)
国語の成績に関して学内の成績のバラつきはOECD加盟国諸国よりも小さい(75カ国中39位)
→同じ学校にいる生徒は成績が似ており多様性が低い
国語の成績に関して学校ごとの分断はOECD加盟国諸国よりも大きい(75カ国中57位)
→成績の良い学校と悪い学校に分断されている
学校間の成績のバラつき
小(相対的に平等):フィンランド、アイスランド、ノルウェー
大(相対的に不平等):イスラエル、レバノン、オランダ
学校内の成績のバラつき
大(学内の多様性が高い):アイスランド、ノルウェー、スウェーデン
小(学内の多様性が低い):インドネシア、モロッコ、コソボ
分析手法
2015年にOECDが実施したPISAの国語のテスト結果を使用し「学校内の成績のバラつき」と「学校間の成績のバラツキ」を国際比較。
学校内の成績のバラつきが大きく(同じ学校に成績が良い子も悪い子もいて多様性がある)学校間の成績のバラつきが小さい(成績の良い学校と悪い学校に分断されていない)方が望ましい。
留意点、限界
この分析は国語の成績のバラツキという結果を指標としています。その差を生み出している原因(学校が提供しているサービスの差なのか、土地柄なのか等)について知るには別の分析が必要です。
編集後記
全国で同じカリキュラムを実施している日本はOECD諸国よりも学校間格差が少なそうな印象があったので、初めてこの結果を見たときは驚きました。国際テストでは成績順位ばかりが注目される傾向がありますが、成績の多様性や生徒の心理状態など色んな調査が実施されているので、面白そうなものをまた紹介したいと思います。
(文:識名由佳「教育のスゴい論文」より転載/ビジュアルコンテンツ:たかのまさこ)
参考文献:
*グラフへのリンク
OECD (2020), "Variation in reading performance between and within schools", in PISA 2018 Results (Volume II): Where All Students Can Succeed, PISA, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/311dddc8-en.
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