中央教育審議会から、令和3年1月26日「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」の答申が出ました。
下記にて総論の図解を行いましたので、出典元と合わせてご覧ください。
また、図解のPDFを作成しました。
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社会の在り方が劇的に変わる「Society5.0時代」の到来
新型コロナウイルスの感染拡大など先行き不透明な「予測困難な時代」
一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが必要
・学校が学習指導のみならず,生徒指導の面でも主要な役割を担い,児童生徒の状況を総合的に把握して教師が指導を行うことで,子供たちの知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」は,諸外国から高い評価
・新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,全国的に学校の臨時休業措置が取られたことにより再認識された学校の役割
①学習機会と学力の保障 ②全人的な発達・成長の保障 ③身体的,精神的な健康の保障(安全・安心につながることができる居場所・セーフティネット)
子供たちの意欲・関心・学習習慣等や,高い意欲や能力をもった教師やそれを支える職員の力により成果を挙げる一方,変化する社会の中で以下の課題に直面
・本来であれば家庭や地域でなすべきことまでが学校に委ねられることになり,結果として学校及び教師が担うべき業務の範囲が拡大され,その負担が増大
・子供たちの多様化(特別支援教育を受ける児童生徒や外国人児童生徒等の増加,貧困,いじめの重大事態や不登校児童生徒数の増加等)
・生徒の学習意欲の低下
・教師の長時間勤務による疲弊や教員採用倍率の低下,教師不足の深刻化
・学習場面におけるデジタルデバイスの使用が低調であるなど,加速度的に進展する情報化への対応の遅れ
・少子高齢化,人口減少による学校教育の維持とその質の保証に向けた取組の必要性
新型コロナウイルス感染症の感染防止策と学校教育活動の両立,今後起こり得る新たな感染症への備えとしての教室環境や指導体制等の整備
・新学習指導要領の着実な実施
・学校における働き方改革の推進
・GIGAスクール構想の実現
・教育振興基本計画の理念(自立・協働・創造)の継承
個別最適な学び(「個に応じた指導」(指導の個別化と学習の個性化)を学習者の視点から整理した概念)
新学習指導要領では,「個に応じた指導」を一層重視し,指導方法や指導体制の工夫改善により,「個に応じた指導」の充実を図るとともに,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整えることが示されており,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ることが必要
GIGAスクール構想の実現による新たなICT環境の活用,少人数によるきめ細かな指導体制の整備を進め,「個に応じた指導」を充実していくことが重要その際,「主体的・対話的で深い学び」を実現し,学びの動機付けや幅広い資質・能力の育成に向けた効果的な取組を展開し,個々の家庭の経済事情等に左右されることなく,子供たちに必要な力を育む
指導の個別化
基礎的・基本的な知識・技能等を確実に習得させ,思考力・判断力・表現力等や,自ら学習を調整しながら粘り強く学習に取り組む態度等を育成するため,
・支援が必要な子供により重点的な指導を行うことなど効果的な指導を実現
・特性や学習進度等に応じ,指導方法・教材等の柔軟な提供・設定を行う
学習の個性化
基礎的・基本的な知識・技能等や情報活用能力等の学習の基盤となる資質・
能力等を土台として,子供の興味・関心等に応じ,一人一人に応じた学習活
動や学習課題に取り組む機会を提供することで,子供自身が学習が最適とな
るよう調整する
協働的な学び
「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないよう,探究的な学習や体験活動等を通じ,子供同士で,あるいは多様な他者と協働しながら,他者を価値ある存在として尊重し,様々な社会的な変化を乗り越え,持続可能な社会の創り手となることができるよう,必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することも重要
集団の中で個が埋没してしまうことのないよう,一人一人のよい点や可能性を生かすことで,異なる考え方が組み合わさり,よりよい学びを生み出す
幼児教育
小学校との円滑な接続,質の評価を通じたPDCAサイクルの構築等により,質の高い教育を提供
身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で達成感を味わいながら,全ての幼児が健やかに育つことができる
義務教育
・新たなICT環境や先端技術の活用等による学習の基盤となる資質・能力の確実な育成,多様な児童生徒一人一人の興味・関心等に応じ意欲を高めやりたいことを深められる学びの提供
・学校ならではの児童生徒同士の学び合い,多様な他者と協働した探究
的な学びなどを通じ,地域の構成員の一人や主権者としての意識を育成
・生活や学びにわたる課題(虐待等)の早期発見等による安全・安心な学び
高等学校教育
・社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力や,社会の
形成に主体的に参画するための資質・能力が育まれる
・地方公共団体,企業,高等教育機関,国際機関,NPO等の多様な関係機関との連携・協働による地域・社会の課題解決に向けた学び
・多様な生徒一人一人に応じた探究的な学びや,STEAM教育など実社会での課題解決に生かしていくための教科等横断的な学び
特別支援教育
・全ての教育段階において,インクルーシブ教育システムの理念を構築することを旨として行われ,全ての子供たちが適切な教育を受けられる環境整備
・障害のある子供とない子供が可能な限りともに教育を受けられる条件整備
・障害のある子供の自立と社会参加を見据え,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備
各学校段階を通じた学び
・幼児教育から小学校,中学校,高等学校,大学・社会といった段階を通じ,一貫し
て,自らの将来を見通し,社会の変化を踏まえながら,自己のキャリア形成と関連付
けて学び続けている。
教職員の姿
・学校教育を取り巻く環境の変化を前向きに受け止め,教職生涯を通じて学び続け,子供一人一人の学びを最大限に引き出し,主体的な学びを支援する伴走者としての役割を果たしている
・多様な人材の確保や教師の資質・能力の向上により質の高い教職員集団が実現し,多様なスタッフ等とチームとなり,校長のリーダーシップの下,家庭や地域と連携しつつ学校が運営されている
・働き方改革の実現や教職の魅力発信,新時代の学びを支える環境整備により教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され,志望者が増加し,教師自身も志気を高め,誇りを持って働くことができている
・全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育むため,これまで日本型学校教育が果たしてきた,①学習機会と学力の保障,②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障,③安全安心な居場所・セーフティネットとしての身体的,精神的な健康の保障を学校教育の本質的な役割として重視し,継承していく
・教職員定数,専門スタッフの拡充等の人的資源,ICT環境や学校施設の整備等の物的資源を十分に供給・支援することが国に求められる役割
・学校だけでなく地域住民等と連携・協働し,学校と地域が相互にパートナーとして一体となって子供たちの成長を支えていく
・一斉授業か個別学習か,履修主義か修得主義か,デジタルかアナログか,遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった「二項対立」の陥穽に陥らず,教育の質の向上のために,発達の段階や学習場面等により,どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていく
・教育政策のPDCAサイクルの着実な推進
(1) 学校教育の質と多様性,包摂性を高め,教育の機会均等を実現する
・子供たちの資質・能力をより一層確実に育むため,基礎学力を保障してその才能を十分に伸ばし,社会性等を育むことができるよう,学校教育の質を高める
・学校に十分な人的配置を実現し,1人1台端末や先端技術を活用しつつ,多様化する子供たちに対応して個別最適な学びを実現しながら,学校の多様性と包摂性を高める
・ICTの活用や関係機関との連携を含め,学校教育に馴染めないでいる子供に対して実質的に学びの機会を保障するとともに,地理的条件に関わらず,教育の質と機会均等を確保
(2) 連携・分担による学校マネジメントを実現する
・校長を中心に学校組織のマネジメント力の強化を図るとともに,学校内外との関係で「連携と分担」による学校マネジメントを実現
・外部人材や専門スタッフ等,多様な人材が指導に携わることのできる学校の実現,事務職員の校務運営への参画機会の拡大,教師同士の役割の適切な分担
・学校・家庭・地域がそれぞれの役割と責任を果たし,相互に連携・協働して,地域全体で子供たちの成長を支えていく環境を整備
・カリキュラム・マネジメントを進めつつ,学校が家庭や地域社会と連携し,社会とつながる協働的な学びを実現
(3) これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する
・ICTや先端技術の効果的な活用により,新学習指導要領の着実な実施,個別に最適な学びや支援,可視化が難しかった学びの知見の共有等が可能
・GIGAスクール構想の実現を最大限生かし,教師が対面指導と遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)ことで,様々な課題を解決し,教育の質を向上
・教師による対面指導や子供同士による学び合い,多様な体験活動の重要性が一層高まる中で,ICTを活用しながら協働的な学びを実現し,多様な他者とともに問題発見・解決に挑む資質・能力を育成
(4) 履修主義・修得主義等を適切に組み合わせる
・修得主義や課程主義は,個人の学習状況に着目するため,個に応じた指導等に対する寛容さ等の特徴があるが,集団としての教育の在り方が問われる面は少ない
・履修主義や年齢主義は,集団に対し,ある一定の期間をかけて共通に教育を行う性格を有し,一定の期間の中で,個々人の成長に必要な時間のかかり方を多様に許容し包含する一方,過度の同調性や画一性をもたらす可能性
・義務教育段階においては,進級や卒業の要件としては年齢主義を基本としつつも,教育課程の履修を判断する基準としては履修主義と修得主義の考え方を適切に組み合わせ, 「個別最適な学び」及び「協働的な学び」との関係も踏まえつつ,それぞれの長所を取り入れる
・高等学校教育においては,その特質を踏まえた教育課程の在り方を検討
・これまで以上に多様性を尊重,ICT等も活用しつつカリキュラム・マネジメントを充実
(5) 感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障する
・今般の新型コロナウイルス感染症対応の経験を踏まえ,新たな感染症や災害の発生等の緊急事態であっても必要な教育活動の継続
・「新しい生活様式」も踏まえ,子供の健康に対する意識の向上,衛生環境の整備や,新しい時代の教室環境に応じた指導体制,必要な施設・設備の整備
・臨時休業時等であっても,関係機関等との連携を図りつつ,子供たちと学校との関係を継続し,心のケアや虐待の防止を図り,子供たちの学びを保障する
・感染症に対する差別や偏見,誹謗中傷等を許さない
・首長部局や保護者,地域と連携・協働しつつ,率先して課題に取り組み,学校を支援する教育委員会の在り方について検討
(6) 社会構造の変化の中で,持続的で魅力ある学校教育を実現する
・少子高齢化や人口減少等で社会構造が変化する中,学校教育の持続可能性を確保しつつ魅力ある学校教育の実現に向け,必要な制度改正や運用改善を実施
・魅力的で質の高い学校教育を地方においても実現するため,高齢者を含む多様な地域の人材が学校教育に関わるとともに,学校の配置や施設の維持管理,学校間連携の在り方を検討
・「令和の日本型学校教育」を構築し,全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びを実現するためには,ICTは必要不可欠
・これまでの実践とICTとを最適に組み合わせることで,様々な課題を解決し,教育の質の向上につなげていくことが必要
・ICTを活用すること自体が目的化しないよう留意し,PDCAサイクルを意識し,効果検証・分析を適切に行うことが重要であるとともに,健康面を含め,ICTが児童生徒に与える影響にも留意することが必要
・ICTの全面的な活用により,学校の組織文化,教師に求められる資質・能力も変わっていく中で,Society5.0時代にふさわしい学校の実現が必要
(1) 学校教育の質の向上に向けたICTの活用
・カリキュラム・マネジメントを充実させ,各教科等で育成を目指す資質・能力等を把握した上で,ICTを「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に生かすとともに,従来は伸ばせなかった資質・能力の育成や,これまでできなかった学習活動の実施,家庭等学校外での学びの充実
・端末の活用を「当たり前」のこととし,児童生徒自身がICTを自由な発想で活用するための環境整備,授業デザイン
・ICTの特性を最大限活用した,不登校や病気療養等により特別な支援が必要な児童生徒に対するきめ細かな支援,個々の才能を伸ばすための高度な学びの機会の提供等
・ICTの活用と少人数によるきめ細かな指導体制の整備を両輪とした,個別最適な学びと協働的な学びの実現
(2) ICTの活用に向けた教師の資質・能力の向上
・養成・研修全体を通じ,教師が必要な資質・能力を身に付けられる環境の実現
・養成段階において,学生の1人1台端末を前提とした教育を実現しつつ,ICT活用指導力の養成やデータリテラシーの向上に向けた教育の充実
・ICTを効果的に活用した指導ノウハウの迅速な収集・分析,新時代に対応した教員養成モデルの構築等,教員養成大学・学部,教職大学院のリーダーシップによるSociety5.0時代の教員養成の実現
・国によるコンテンツ提供や都道府県等における研修の充実等による現職教師のICT活用指導力の向上,授業改善に取り組む教師のネットワーク化
(3) ICT環境整備の在り方
・GIGAスクール構想により配備される1人1台の端末は,クラウドの活用を前提としたものであるため,高速大容量ネットワークを整備し,教育情報セキュリティポリシー等でクラウドの活用を禁止せず,必要なセキュリティ対策を講じた上で活用を促進
・義務教育段階のみならず,多様な実態を踏まえ,高等学校段階においても1人1台端末環境を実現するとともに,端末の更新に向けて丁寧に検討
・各学校段階において端末の家庭への持ち帰りを可能とする
・デジタル教科書・教材等の普及促進や,教育データを蓄積・分析・利活用できる環境整備,ICT人材の確保,ICTによる校務効率化
*文部科学省WEBサイト「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号)を元に作成
出典:文部科学省WEBサイト「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号)
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