2022年にカタリスト Labで4回連続講座として実施した『校内研修のミカタ※』。
主に研究主任など、学校内の研修や研究に携わる先生方約20名にご参加いただきました。
一方的に教える形を取らない大野睦仁さんの講座では、先生方が主体的に参加されている様子が伺え、参加者同士のコミュニティも自然と形成されているようでした。
一方、研究主任というポジションに関する情報、周囲に相談できる環境はまだ少なく、悩んでいる先生方が多いこともわかりました。
今回、その参加者の一人、あおのりさんに、参加にいたるまでと参加後の今、ご自身や学校内でどんなことが起こっているか、約1年に渡る様子をレポートしていただくことになりました。
成功事例としてではなく、プロセスの共有にチャレンジしてくださったあおのりさんの1年の軌跡が悩んでいる先生方に届いたら嬉しいです。
※『校内研修のミカタ』の詳細はこちら。
「ここからどうしていけばいいのか?」という不安
「校内研修のミカタ」がスタートした2022年9月。講師の大野睦仁先生からの言葉を首がもげるほど頷きながら聞いていたのを覚えています。僕の押し付けアドバイスや必要以上の声かけに表情を曇らせていた職場の先生方の顔を思い浮かべながら、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら1回目の講座が終了しました。
「ここからどうしていけばよいんだろうか?」
夏休み前から抱えていた問いへの答えは、夏休みが明けても出る兆しがないままでした。そんな中、次の課題(目標)が迫っていました。それは11月末の公開研究会です。
僕の所属校は2020年度から3年間、県の改革推進校として研究大会を開いてきていました。2021年度はその研究の最後の年でした。
もちろん、「公開研究会のために自分の上手くいかない現状をどうにかする」では本末転倒です。そんなとき、必ず話を聞いてくれたのは研究主任でした。僕は彼に「自分の立ち位置がわからなくなっていること」「どのように先生方に関わっていくとよいのか」という自分の中にあったモヤモヤを素直に相談しました。
先導するのではなく並走する関わり
二人で話し合った上での結論、それは「先生方の横に立つこと」でした。
「横に立つ」上で意識したのは、先導するのではなく、並走する関わりです。
コミュニケーションの質よりも量を重視し、あるときは授業や子どもたちの話を、またあるときは他愛のない雑談を重ねながら関わりを深めていきました。
そうしていく中で、自身の困り感を話してくれる先生方が少しづつ増えてきたのです。
「授業中の子どもたちの様子で気になることがあるんですが・・・」
「算数を自由進度学習で進めたいんですが、課題がいまいちしっくりきていないんですよね・・・」
このような相談を受けたときは、『解決するヒントは先生方自身の中にある』ということに気づいてもらえるように自分にできることは何か?を自分自身に問い続けました。
そうすることで先生方に対する問いも、「〇〇先生は、どうなるといいなと思っているの?」「今考えている方法以外にもできそうなことはありそう?」といったように変化していきました。
各々の先生方の中から出てくる考えや感情を元に授業をつくり、子どもたちとの関係性を紡いでいくこと。誰かに言われたからやっている教育活動ではなく一人ひとりが自律的に取り組む活動が、学校を形づくっていくのではないかという具体が見え始めました。
先生同士が繋がる機会を増やす
周りの先生方との関係性を紡ぎ直していった9月10月。僕自身が一人ひとりの先生方と関係性を再構築していく中で、自分以外の先生同士が関わる機会を増やしていきました。
同じ教科の授業をつくる時に悩んでいる先生方を繋ぐ
素敵な実践をされていた先生を紹介する
「自律的な学び」という切り口でチャレンジする先生どうしを引き寄せ互いの授業を見合える体制を作る
など、このような機会により、確実に先生方の関係が深まっているように感じました。
同時に11月末に控えた公開研究会に向けての準備も進んでいました。この公開研究会の中身を設計するに当たって、本校の現状を見てもらうには子どもたちの学びを下支えする大人(教職員)たちの学びにフォーカスした発表をするのが良いのではないかと考えました。なぜなら、その時まさに互いの関係性が深まりつつあった本校の大人たちの姿を元に、参加者の方々に『子どもたちの学びをつくるために大人たちはどうあるべきなのか』ということについて対話してもらえないだろうか?と思ったからです。
そんな対話の場を作るために研究会本番までに研究主任と一緒に取り組んだことは、本校の先生方全員にインタビューをすることでした。インタビューでの質問内容は、「うちの学校って、どうですか?」。かなり抽象的な問いでしたが、先生方も協力してくださり良いところも悪いところも含めて、思うままに答えていただけたと思っています。忖度なしのインタビュー結果が僕や研究主任にとっては本当にありがたく、この職場の中に心理的安全性が生まれてきたと感じました。
公開研究会で「うちの学校」を語る先生方
そして、公開研究会本番。体育館に円を描いて座った本校の職員。それを取り囲むように他校の先生方が参観するという金魚鉢形式で開催しました。そんな中「今年のうちの学校ってどんな感じ?」という問いに対して、誰からでもなく意見を話し出す本校の先生方。ファシリテーターであった僕が必要のないくらいに、互いの言葉を拾い上げながら話を進めてくれました。
「うちの学校は、いい意味でフラット。新しくきた人も前からいる人もお互いに頼り合える関係がある。」
「でも、時にはグイッと引っ張ってもらえると助かる場面もあるように感じる。話し合って決めることに反対はしないけれど、時間がかかるのも事実。そこの折り合いをつけるために『決め』を打つのも必要なことだと思う。」
誇れる部分だけでなくそこに確かに存在する課題の部分まで若手やベテラン関係なく言葉に出せる集団。関係性が深まってくると自分達の痛いところも含めて受け取り合える構えができるんだと感じた時間でした。参観された先生方はどう感じられたのでしょうか。
公開研究会に関していうと、この形が最良であるというふうには僕らは考えていませんでしたが、この形を研究会に持ってくることで一番自分の事をふりかえり、学校の中での自分の役割に改めて目を向けた先生方の姿から、その機会を設定できただけでも本校にとっては大きな意味があったように思っています。
11月末、こうして2022年度の僕たちの大きなアウトプットが終わりました。そして、年明けからは、来年度(2023年度)に向けた準備が始まっていくのでした。
<執筆者プロフィール>
あおのり
長野県公立小学校教諭
昨年度から校内研究・研修を担当する“副主任”に。主任と力を合わせて研究・研修の場づくり、先生方のチャレンジの可視化、授業づくりへのアドバイス(一緒に悩み一緒につくっています)などをおこなっています。
編集:たかのまさこ