2022年に『カタリスト Lab』で4回連続講座として実施した『校内研修のミカタ※』。
主に研究主任など、学校内の研修や研究に携わる先生方約20名にご参加いただきました。
一方的に教える形を取らない大野睦仁さんの講座では、先生方が主体的に参加されている様子が伺え、参加者同士のコミュニティも自然と形成されているようでした。
一方、研究主任というポジションに関する情報、周囲に相談できる環境はまだ少なく、悩んでいる先生方が多いこともわかりました。
今回、その参加者の一人、あおのりさんに、参加にいたるまでと参加後の今、ご自身や学校内でどんなことが起こっているか、約1年に渡る様子をレポートしていただくことになりました。
成功事例としてではなく、プロセスの共有にチャレンジしてくださったあおのりさんの1年の軌跡が悩んでいる先生方に届いたら嬉しいです。
※『校内研修のミカタ』の詳細はこちら。
研究に携わる
コロナ禍の始まり、全国の学校という学校が一斉に休校でのスタートとなった2020年度4月。僕は兼ねてから予定していた通り、それまで小学校教員として13年過ごした大阪を離れ、長野県軽井沢町に移住しました。長野県での勤務校は、同じ町内にある公立小学校。全校児童350名ほどの学校で、各学年2クラス+特別支援学級といった中規模学校でした。
新しい土地での暮らしにも慣れ、新しい学校、新しい職員集団の中で自分自身のポジションも少しずつハッキリとしてきた2020年度末。僕は、2年間の長期派遣研修に出ることになりました。研修に出るとはいっても所属は元の勤務校のまま、週に3日は研修先へ、残りの2日は所属校へ、という特殊な働き方で2年を過ごすことに。
研修一年目(2021年度)は、この特殊な働き方に慣れることに精一杯で、後にお話するような所属校での「研修・研究」といったことに意識を向ける余裕は、ハッキリ言って0(ゼロ)でした。その当時の研究主任はとてもパワーのある方で、自身の実践や教育観を若手に丁寧にレクチャーし、研修・研究をいくつも企画してくれる、そんな文字通りスーパーティーチャーでした。その研究主任のおかげで、所属校では研修の度に素敵な講師の方を招聘し、新しい校内研修の形が提案され、校内にそれまで無かった風が入ってきたように感じました。今思うと、この当時僕やその他の職員の受けた刺激が今も本校には残っていて、それが文化になり出している、そんな感覚を持っています。
そんなスーパーティーチャーだった研究主任でしたが、次の年に転勤が決まり、校内の研修・研究体制が変わることになりました。公立学校なので、教職員メンバーの入れ替わりは避けられません。残されたメンバーとしては、「これまでに培ってきた本校の良さをうまく次年度のチャレンジにできないか?」という思いと「変えるべきところは、思い切って変えていって良いのでは?」という思いを持ちながら2022年度が始まりました。
2022年度、僕自身は引き続き長期派遣研修中の身の上でしたが、前年と違ったのは所属校で“研究副主任”という立場になったことでした。基本的には授業は持たず、校内の先生方の授業を見たり、参加したり、一緒に授業をつくったり。また同時に子どもたちとの関わりをつくりながら学校全体を俯瞰する。加えて、研究や研修の場を設計し、先生方の学びを進めるお手伝いをしていく。そんな立ち位置を求められたのです。
なんだかハマらない
年度当初、4月1日、意気込んで教職員の「出会いの場」を作りました。対話を大切に、新しく来られた先生方が自己表出できるように、残留職員もよりお互いを知り合えるように、そんなことを考えながら設計しました。また、研究のキックオフも前年度までの研究の流れを対話を通して語り合うことから始め、「2022年度はどんな方向をみんなで向いていくと良いか?」と言ったところまで話すことができたように感じました。スタートは、上々。授業づくりにも積極的に参加しました。新しく来られた先生方には前年度本校でチャレンジしてきた学びの様子を伝え、前年度以前からおられる先生方とは「個別最適な学び」や「自立した学び」と言ったキーワードを基により踏み込んで授業を考えていきました。また、授業を見せてもらった後に自分なりのアドバイスを伝えたり、子どもたちの様子で気になることなども共有するようにしたり、僕の立場でできることを考えながらフル回転していたように思います。
しかし、夏前くらいでしょうか。なんだか自分の言葉が相手に届いていないと感じはじめました。校内研修を企画し、参加してもらうものの先生方が自分ごとで参加している感じがない。授業のアドバイスも、どこか小言を言われているような表情に見える(僕自身の考え過ぎかもしれませんが)。その時期、研究主任とも当時の研究の様子について話し合いました。そこで研究主任からもらった言葉が、
「研究がなんだか手法の話になりがちだよね。もっと、何のために今の研究を中心に置いたのか、そんな話ができていないような気がする。ゴールが職員間で擦り合わされていないから手法の部分に目がいくけど、ゴールイメージがもっと共有できれば手法は違ってもいいっていう考え方に立てるんじゃないかな?」
というものでした。
今思うと目の前のことに意識が行きすぎている時期だったのだと思います。僕自身が、先生方に対して何かアクションを、そして先生方に何かしらの変化を、そんな部分を追い求めすぎたが故に本当に大切にしないといけない部分を見失っていたのです。
カタリスト Labの第2回で大野先生がおっしゃっていた言葉の中に『職場づくりと学級づくりはつながっている』という言葉がありました。学級は一つの社会、そして職場も一つの社会、子どもたちに対して寄り添うという行為は職員室の中での職員に対するそれとなんら変わらない。これまでの教員生活で何度も学級担任を持ち、その度に感じていた感覚。それでも2022年度の夏、僕はこの感覚を忘れていたようです。
僕が自身の状態に気づけたのは、研究主任に上の違和感のことを相談し、上のようなアドバイスをもらった時でした。知らず知らずのうちに上から投げていた先生方へのアドバイスという名の強制。良かれと思って設定した研修内容は、本当に先生方の目の前のニーズに沿っていたものだったのか。そんなことを悶々と考えながら夏休みが過ぎ、9月になりました。「自分自身の先生方に対する関わり方や姿勢を考え直す必要がある」と思い臨んだ2学期(本校は前期後期の2期制なので厳密には「2学期」という言い方はしない)。
そのタイミングで募集案内のあった『カタリスト Lab』。研修・研究、職員室を「つくる」ために自分は何ができるのか?その時点で全く見通しの持てていなかった僕はすぐに参加申し込みをしました。
<執筆者プロフィール>
あおのり
長野県公立小学校教諭
昨年度から校内研究・研修を担当する“副主任”に。主任と力を合わせて研究・研修の場づくり、先生方のチャレンジの可視化、授業づくりへのアドバイス(一緒に悩み一緒につくっています)などをおこなっています。
編集:たかのまさこ