「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
京都橘大学で教員養成の職に就く著者の最新刊です。
著者は東京で中学校国語科教員を経て、現職にあります。現職時代より『授業づくりネットワーク』の論者として活躍されていて、ディベート関連の提案も数多くされてきています。
そうした「現場感覚」をベースとして、思春期の少年少女とのコミュニケーションのあり方、あるいは距離感の取り方について具体的な場面を描きつつ、ケーススタディのスタイルで述べられている本です。
例えば、授業中に子どもから次のように言われたら、なんて応えようと思いますか?
「塾でやった!」
「もう知ってる!」
「5秒以内」にどうぞ。5、4、…1、0。
いかがでしょうか。
きっと教育実習中にもそのような子がいたのではないですかね。あるいは実習生であることに忖度してそんなことを言わない優しい子たちのクラスで実習しましたか?
経験がなくても安心してください。必ず出会います。こうした場面。
「うわぁ…」と引きますか? それとも「面白いじゃないか。やってやろう!」と思いますか? 教職はブラックであるという風評喧しい中で、それでも教職を選んだ皆さんですから、きっとこういうことの一つ一つに真正面から向かっていこうとされているのではないかなと思います。
さてさて、私、ただいま「真正面から」と言いましたが、その向き合い方は皆さんの思い描いている教師像や、自らの生育歴、そしてありたい自分像によって千差万別なのではないかと思います。だって、人間だもの。ふじを。
AIではなく、生身の人間が教育という仕事を行います。ですから、人間性がそこに現れます。
だから「みんな違ってみんないい」。…というわけでは「ない」のです。いや、「いい」のです。
(どっちや!)
ここ、ちょっと難しいところですね。そして、ここのところの区別をきちんとしないと、例えばネット上の変な教育言説に振り回されてしまいます(←ブーメラン)。
「みんなちがってみんないい」というのは、「(方法は)みんなちがって(教育的効果が発揮されるのであれば)みんないい」ということです。
わかりづらいかな?
池田先生は、ここでの返し方を3種類示しています。
◯論理で返す
◯知識で返す
◯ユーモアで返す
先ほどの「塾でやった」の場合は、こんな返しが考えられるそうです。
【論理】「君は、人の“わからないことを考えるという喜び”を奪っていることを理解していますか?」
【知識】「」
【ユーモア】「」
はい。詳しくは本書を紐解いてくださいね。
で。
先ほど私は「方法は」みんな違っていいのだと言いました。つまり、論理で返そうが、知識で返そうが、ユーモアで返そうが、求める教育的効果が得られるのであれば。ここでは「もう知ってる!」と言って、みんなで考えることを妨害していた子が、もう少し前向きな態度になって授業に参加することですね(もちろん、授業改善の視点から見直すことも必要ですが、今はその話ではありません)。
読者の皆さんはどれを選びますか? そして、その選んだ方法は、あなたにとって本当にベストですか? 当事者のその子にとっては最善解ですか? そして、現状のベストだとして今後も同じやり方を続けますか? ってことなんです。
何を言わんとしているかというと、以下のことです。
① 自分が選んだ「切り返し」は、自分の指導の傾向を表している。
② その指導の仕方が、自分のキャラに合っているか点検が必要。
③ その指導の仕方が、目の前の子供の実態に合っているか点検が必要。
「何をするか」は大事。「どのようにするか」もとっても大事。そして、その結果、「どうなったか」ということが一番大事。良い結果にしろ、望んだ通りの結果ではなかったにしろ、その地点をスタートラインとして、次の働きかけを考えます。考え続けます。
教師の仕事って、おそらくそうしたことの繰り返しですから。
ゆえに、この本を早めに読んで、「自分はどういう教師として子供の前に立とうとしているのか」「子供たちは自分をどういう教師として理解しているのか」を考える視点を手に入れられたらいいなと思いました。
皆さんの教員生活が充実したものとなりますように。
おすすめしてくれた方
藤原 友和さん
1977年北海道生まれ。函館市立万年橋小学校教諭。著書に『授業が変わる! 教師が変わる!「ファシリテーション・グラフィック」入門』『T H E見える化』(共に明治図書)、近刊に『オリジナル地域教材でつくる「本気!」の道徳授業』(小学館)ほか、共著多数。小学館web版「みんなの教育技術」で「指導のパラダイムシフト〜斜め上から本質を考える〜」を連載中。blog「潮風の香る教室」で周辺雑記を掲載。Twitter、Facebookにて日常を発信。
(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)