「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
初任者のみなさん
小学校では令和2年度から、中学校では令和3年度から本格実施されている新しい学習指導要領。この他にも、GIGAスクール構想の推進、学校の働き方改革のための取り組み。そして、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための対応等々…。これまでにない「教育改革の大きなうねり」と「新型コロナウイルス感染症の影響下」において、子どもの豊かな学びを実現する授業の改善、教員が健康で生き生きと働くことができる職場づくり、保護者が安心して子どもを通わせることができる学校運営など、現場には解決しなくてはならない課題が山積しています。
令和3年3月に、中央教育審議会は「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(答申)を取りまとめました。その中には、「『個別最適な学び』が進められるよう(中略)個々の興味・関心・意欲等を踏まえてきめ細かく指導・支援することや、子供が自らの学習の状況を把握し、主体的に学習を調整することができるよう促していくことが求められる」と示されています。また、「探究的な学習や体験活動等を通じ、子供同士で、あるいは多様な他者と協働しながら、他者を価値ある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することも重要」と示されています。
このように、教員に求められるスキルやマインドは大きく変わり、「教育観」や「子ども観」のアップデートが求められるようになっています。しかし、「画一的な一斉指導」に慣れ親しんできた教員にとっては、「子ども主体の学び」への転換がなかなかうまく図れず、苦しんでいる現実もあるようです。
私は、これまでの経験やしがらみにとらわれない初任者のみなさんは、「教育改革の大きなうねり」を乗り越える大きな力を秘めていると考えています。初任者ならではの柔軟な感性とスポンジのような吸収力で「子ども主体の学びの在り方」について学び、学校現場で具体化できるよう、どんどんチャレンジしてほしいと願っています。そんな時、ぜひ手に取っていただきたいのが、一般社団法人「こたえのない学校」の代表を務める藤原さとさんが執筆された「『探究』する学びをつくる」(平凡社 2020)です。
「プロジェクト学習」が求められているのはなぜか?
「プロジェクト型学習」とは何か?
「プロジェクト型学習」の効果は?
「プロジェクト型学習」を成功させる組織の在り方とは?
などについて分かりやすくまとめられています。これからの教育の未来を担う初任者のみなさんにとって、道標となる書になるかもしれません。本書にも取り上げられているハイテック・ハイを題材にしたドキュメンタリー映画「Most Likely to Succeed」も日本全国で上映会が行われています。本書を読んでから上映会に参加してもよし、鑑賞してから本書を読むもよしですが、初任者の皆さんの感性を刺激するものであることに間違いないと思います。
おすすめしてくれた方
中村 浩二さん
1970年愛知県名古屋市生まれ。
平成5年より名古屋市立小学校教員。教員経験29年。
平成22年度・23年度、愛知教育大学教育実践研究科(教職大学院)学校づくり履修モデルへ派遣され、学校評価の在り方を中心に学校運営について学ぶ。
平成29年度より、名古屋市立公立小学校教頭。「学校の働き方改革」に取り組む。
令和元年度より、「個別最適化された学びを提供する授業改善の推進」のモデル実践校で事業の推進に携わる。
「学校の働き方改革」「組織開発」に関するフォーラムや管理職向け研修会での講演多数。教育関連の雑誌や新聞にも寄稿している。日本教育経営学会所属。
「全職員が定時で帰る スクールリーダーの職員室革命」(明治図書)の作者。
(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)
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