「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
あいさつをしましょう、友達に優しくしましょう、失敗したら謝りましょう、勉強をしましょう、運動をしましょう、礼儀正しくしましょう・・・
教師は多くのことを子どもたちに求めます。
なぜならそれは「よい」ことだからです。
ではなぜこれらは「よい」とされているのでしょうか?
「よさ」の根源とはどこにあるのでしょうか?
そういうことを考えないまま、子どもたちに「よいこと」として、たくさんのことを求めていいのでしょうか。
僕が教壇に立って初めて出会った壁はこれでした。
「よさ」の仕組みや起源、性質や効能についてなにも知らないのに、これはいいことだからやりなさい、というのはあまりにも無責任だと思えたのです。
そこで、哲学や宗教の本を読み、人がこれまで考えてきた「よさ」について学び、子どもたちとの関わりの中から本当の「よさ」を見つけようとしました。
話は少し変わりますが、人の脳の反応速度は、他の哺乳類に比べて非常に遅いらしいです。
出典:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2201/26/news173.html
この結果は、頭の回転が遅い!ということではなく、人はそれだけ、目の前の出来事に対して熟考することができる、ということなのだと思います。
哲学者のフッサールはこのように、目の前の出来事を見たままに断言するのではなく、いやいやまてまて、と一度判断を留保して考えることを「エポケー」と呼びました。
挨拶はいいことなのだから全員しなさい!と即断するのではなく、なぜ挨拶がいいことなのか、そもそも人にとっての「よさ」とはなにか。そうやって”エポケー”しながら、目の前の現象を吟味しようとする態度は、人として生きる上で非常に大切なのではないでしょうか。
ここで紹介した「哲学と宗教全史」は目の前の現象を鵜呑みにせず、吟味熟考しつづけた先人たちの思考を一望することができます。分厚い本ですが、大変わかりやすく書かれており、おすすめです。
教育実践には哲学が必要だとよく言われます。では、その哲学とは。自分の中に哲学を構築するための一助として活用してみてください。
「よさ」とはなんでしょうか。
おすすめしてくれた方
葛原 祥太さん
兵庫県の公立小学校教員。1987年、大阪府生まれ。同志社大学を卒業後、兵庫教育大学大学院を修了し、現職に就く。 2019年に刊行した『「けテぶれ」宿題革命!』(学陽書房)は、発売後即重版。教師向け教育書としては異例の2万部を売り上げ、今なお重版がかかり続けている全国で「けテぶれ」に取り組む学校が急増しており、ボトムアップでの教育改革に取り組んでいる。Twitterでは「けテぶれ」以外にもオリジナルのアイデアを多く発信している。Twitterのフォロワー数は約15,000人。
(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)