「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
多くの地域で、人口減少・少子高齢化が加速しています。子どもの姿も目に見えて減っていく地方に追い討ちをかけるように、今後2040年までに1800の自治体の約半数が消滅するという予測が示されました。2014年に日本創成会議*が発表した、通称「増田レポート」です。
もちろんどこでどのように生きていくかは一人ひとりの選択に委ねられるべきですが、多感な時期の子どもが地域という肥沃な学びの土壌に浸り自ら気づきを得る機会を持てるかどうかは、教員や学校の考えに大きく左右されるだろうと思います。
その意味で、地域連携や体験学習に少しでも関心のある先生方にオススメしたいのがこの本です。
本書の筆者は本書の筆者は、明治以降の日本の学校教育を、成績重視の〈地元を捨てさせる教育〉だったと指摘します。しかし同時に〈土地に根ざす学び〉も地下水脈のように流れてきたことに着目し、大正・明治初期に遡って郷土教育運動やデンマークのフォルケホイスコーレから着想を得た教育運動などの系譜を辿りながら、いま・ここを掘り下げる学びの価値を照らしていきます。
この本との出会いは、学生時代に大学を休学して小さな島の教育委員会と公営塾で半年間のインターンをしていたときです。教職課程で学んだ知識しかなかった当時の自分にはやや難解な内容でしたが、地域の捉え方への解像度が少し上がった感じがあります。
そしていまは農業高校の社会人講師として、地域をフィールドに学ぶ授業を担当しています。コーディネートをする上で心がけているのは、生徒も地域の人も、ともに育ちあえる取り組みになることです。教育と地域には相互作用があるとあらかじめ理解できていたのは、この本を読んだ影響が大きいです。
オンラインを活用すればどこででも学ぶことができる時代になりました。だからこそ、いま・ここでしか学べないことは何か、問い直していく必要があると思います。
約10年経ったいまも時々読み返します。最近だと、農の教育力に関するくだりに付箋を貼る手が止まりません。噛めば噛むほど味が出る、スルメのような本です。
*日本創生会議:http://www.policycouncil.jp/
おすすめしてくれた方
森山円香さん
一般社団法人神山つなぐ公社 理事
徳島県立城西高等学校神山校 社会人講師
大学を休学して臨んだ島根県海士町教育委員会および町営塾でのインターン経験を経て、教育と地域づくりの可能性を肌身で感じる。復学後、認定NPO法人Teach For Japanの九州事業部を立ち上げ、公立学校や公共施設での学習支援事業・居場所づくり事業の企画・運営及び教員向けフェローシッププログラムの採用・広報に従事。
神山の地方創生戦略策定に携わったことをきっかけに、2016年4月より神山町へ移住。地域公社で主に教育プロジェクトを担当している。豊かな自然、営んできた歴史、培ってきた文化を受け継いでいく中で、人が健やかに育つことのできる環境づくりをしていきたい。
休日は庭の自家菜園で野菜を愛でたり、山や川でアウトドアクッキングを楽しんだり。
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(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)