「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
誰のための実践か
教育現場は時々の為政者の方針に無批判に追従したり、研究者が紹介する教育理論をただ適用するところではない。まさに教育を実際に行う教師こそが、教育研究を行う主体でなければならない。「教育実践」ということばには、このようなメッセージがこめられていた。
本書の冒頭にあるこの数行が大好きです。この部分を簡単に表現すると「ベクトルがどこを向いているのか」ということだと考えています。当たり前のことですが、私たち教師は一人ひとりの子どもと向き合い、育てることを求められています。日々、子どもたちと喜び、悩み、時には衝突し、お互いによりよい方向へと漸進していきます。現実はうまくいかないことだらけですが、それが人間と人間が関わり合うことだと思いますし、その中に面白さを見出せる職業が教師だと感じています。
さて、これは私自身の反省でありますが、時としてこのベクトルが子どもたち以外に向くことがあります。例えば「アクティブラーニング」や「個別最適な学び」など、ここ数年の「流行語」に踊ってしまったり、研究会の理論を検証するために無理に実践をしてしまったりというように、子どもたちを置き去りにして自分がしたいことをしてしまったという反省が少なくありません。そんな自分に気づいた時は本書を読み返して、ベクトルの修正を行っています。
子どもありき
本書は戦後の焼け野原からの復興、そして高度経済成長を経て、21世紀へと激動する社会の中で真正面から子どもたちと向き合い、その中で抱える課題や困難を子どもたちと乗り越えようとする先達たちの実践が簡潔に描かれています。その姿からは、現場で子どもたちと向き合う教師一人ひとりが教育を行う主体であり、そこで子どもたちと営む実践こそが未来を変えていくエネルギーを生み出すのだと励まされます。
本書で紹介されているどの方々にも共通することが3つあると思います。
1つ目は、目の前にある切実な問題に正面からぶつかっているところです。時代や環境によって課題は異なりますが、目を背けずに何とかしようと奮闘する姿に痺れます。
2つ目は、その中で独自の教育観を磨き上げているところです。それぞれの軸となる部分が子どもたちとの奮闘から生み出されていることに感銘を受けます。
3つ目は、「どの子にも」という強い思いがあるところです。誰一人として見捨てない、全員を大切にする姿は自分も大切にしたいと日々思っています。
少しかたい文章になってしまいましたが、今の教育がどのような流れの中で行われているのか、先達のどのような実践が私たちの土台となり支えてくれているのかがわかる魅力たっぷりの一冊です。全力でおすすめします。ちなみに"2"もあるので要チェックです。
おすすめしてくれた方
永井 健太さん
1986年生まれ。大阪市公立小学校教諭。教師歴13年目。社会科の授業づくりと組織開発に関心が高く,日々自己研鑽に努めている。友人と共に教育サークル「プットスルカイ」を立ち上げ,定期的に教育について語り合っている。
Twitter https://twitter.com/ken_chiku_riiin
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(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)