「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
7年前、右も左もわからない新米教師だった私は、子どもたちの学ぶ力と創造性に日々圧倒されながらも、同時に、「どうしたらより良い学習環境をつくることができるだろうか」という問いと常に共にありました。
この本と出会ったことで、上記の問いを探求していく上では、そもそも「人はいかに学ぶのか」についての研究成果を知ることがとても役に立つのだということに気づかされました。
しかし、そのことに気づいたのは残念ながら学校現場を離れた後でした。もっと早く知っていればきっと教室で起こる出来事の見え方が全然違っていただろうな、と思います。
本書は、1980年代に隆盛した日常的認知や知的好奇心の研究を整理してまとめたもので、その後の認知科学・学習科学の研究領域にも大きな影響を与えています。
その主張は一貫して、「人はみな自らの資質・能力を使って能動的に学ぶ有能な学習者である」というもので、書かれてから30年以上が経った今でも、今後の教育を考えていく上で示唆に富んだ内容であり続けています。
授業も日々の何気ない子どもへの声かけも、教師自身が学び手をどのような存在として捉えているかという根っこの部分、つまり学習観が大きく影響します。
だからこそ、世の中に溢れる様々なhow toに振り回されずに、学びのプロセスは一人ひとり多様で複雑なものであることを認識して、自分自身の学習観を見直し続ける力が非常に重要なのではないかと思い、本書を選出させていただきました。
この本が、これから現場に出るみなさん自身が持つ「学び手」のイメージを問い直し、「教え手」はどのような存在であるべきかについて改めて考えるきっかけになれば幸いです。
おすすめしてくれた方
池田 由紀さん
認定NPO法人Teach For Japan 職員 / 聖心女子大学大学院博士前期課程(益川研究室)
早稲田大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社し物流・用船事業に従事。2015年4月よりTeach For Japan第3期フェロー(教師)として奈良市内の公立小学校に赴任。教室では「子どもたちと社会、世界を繋ぐ」を軸にした実践を行い、地域では子どもたちとダンスクラブを立ち上げたり、映画上映イベントや教育関係者が交流できる場づくり・ワークショップの企画をしたりと、学校内外で様々な活動に取り組んだ。奈良での3年間の教員生活終了後、東京にて教育ベンチャー企業と私立の小中一貫校でのパラレルキャリアを経て、現在は大学院で学習科学というフィールドで研究活動をしながら、教育NPOで教師の採用や研修開発などをしています。
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(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)
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