「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
児童・生徒たちが、自由にのびのびと個性を発揮し、周りはもちろん自分のことを信じて、主体的に学んでいける学級を作りたい。
新卒の初任者のみなさんは、このような希望を抱いて過ごしていることでしょう。私が入職した3年前も、同じような理想を持ち、そしてそれは今でも変わっていません。しかし実際のところ、私はどうしても、権威性のもとにコントロールをしようとしてしまう振る舞いから逃れることができませんでした。人としての未熟さを感じました。
「授業規律」という言葉。校則という存在。集団生活をするうえでは、それらに従うことを余儀なくされる側面がある。しかしそれは、「ルールだから守りなさい」「決まりだから従いなさい」というものではないはずです。あくまでも、互いが異なる存在である「他者」の集合体であるという状況において、安心・安全を担保し、共に遊びや学びを楽しみ、あるいは一つのごとに向かっていったり、はたまたそれぞれの向かうところを応援し合ったりするためのものです。
『こども六法の使い方』から私は、
・誰に対しても基本的人権は保障されていて、義務を果たす云々は関係がない
・だからといって好き勝手すると他者の権利を脅かすから、ルールが存在する
・ルールには合理的な目的があり、合意によって作られ、変えることができる
ということを改めて理解しました。
著者自身のいじめ体験を原点とし、当時の自分へのプレゼントとして制作された『こども六法』は、たちまちベストセラーに。多くの学校でも図書館に収蔵されましたが、あくまで著者が目指すのは「1学級に1冊」だそう。苦しんでいる子どもが、『こども六法』を片手に大人に相談ができるようになる、自分が悪いわけではないと気づくことができる、という状況を目指していると聞きました。しかしその実、「こども六法に書いてあるからダメでしょ」と、子どもを諌めるためのツールになってしまっている状況があったそうです。
まもなく教壇に立つみなさんが、目の前にするのは、それぞれが異なる存在である人々の集合体です。いろんなことが起き、どうにも手に負えないことも出てくるかもしれません。そんなとき、ルールを目的とせず、ルールの先に、互いを尊重しあえる関係を構築したいという想いを伝えられるようになるために、この本をお勧めします。『こども六法』も、一緒に買って、ぜひ教室に一冊。
おすすめしてくれた方
遠藤 忍さん
認定NPO法人Teach For Japan 7期フェロー。福岡県飯塚市にて中学校英語の講師。1988年生・茨城県古河市出身。
2013年に慶應義塾大学SFCの大学院を修了。その後2019年1月まで株式会社マクロミルに勤務し、データ分析・人事(人材育成・制度設計・新卒採用)を担当。満を持してTFJフェローとなり、プログラミング教育・授業へのICT導入・実習とビジネスプランづくりの両輪による農業ビジネス体験・社会人45人を巻き込んだ「社会人と中学生の2on1キャリア対話」の実施・年間コンセプトに基づく生徒会活動の刷新を図る。一方で、現場に入り、学習規律や授業設計、学力向上で太刀打ちできない感覚を覚える日々に遭遇し、教師の偉大さと自分の至らなさを思い至りメンタルブレイクを起こしかけたこともあった。
自身が3年間掲げてきた Vision / Mission / Value について書いたブログ記事を、本企画の呼びかけ人である木村氏にTwitterで褒められたことに気を良くし、自身のValueである「わたしとは違うあなたと、一緒にうまいことやって、誰かに役立つことをする」という考え方に引き寄せて、今回の本を選んだ。『こども六法』の著者は大学の後輩にあたり、一緒に書店イベントなどを企画したこともある。
本当はもう一本紹介したかったのだが、そのもう一本はこちらから→ https://enshino.biz/archives/7195
(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)
▼2021年にご紹介いただいた書籍はこちら