「初任者へおすすめの一冊 (2021)」として4月から学校現場で教員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
「沈黙の世界」マックス・ピカート(著)
おすすめの理由
ぼくも、ずいぶん饒舌な教員でした。1990年代の後半に、ワークショップ・協同に授業をスライドしていったのも、活動に魅せられたり、子どもたちの声に耳を傾けやすくなったりすること以上に、実は自分の饒舌を恥じていたからでしょう。ぼくは結局最後まで饒舌を捨てられないダメな教員でした。が、いつもそういう自分を内省し続けられていたことには意味があったのでは、と思います。新卒の時代から自分のリフレクションの真ん中にあった本が、ピカートの『沈黙の世界』です。この本は、自分の言葉のみすぼらしさを、時に、鏡になって「リフレクション(反射)」してくれました。
要するに、沈黙は言葉がそこから生じたのちにもなお、言葉のもとにとどまっている。言葉の世界は沈黙の世界のうえに打ち建てられているのだ。そして言葉は、そのしたに沈黙の広大な基盤がよこたわっているときにのみ、安心して文章や思想のかたちをなして遠くまで動いて行くことが出来る。
34頁
おすすめしてくれた方
石川 晋(いしかわ しん)さん
ばん走者。
1967年北海道生まれ。教員を28年務めた後、ただの「ばん走者」になりました。NPO授業づくりネットワーク理事長という、一応の肩書きもあります。
(企画:木村彰宏 / 編集:高野雅子)