「初任者へおすすめの一冊 (2021)」として4月から学校現場で教員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
「世界最高の学級経営」 ハリー・ウォン・ローズマリー・ウォン(著)
おすすめの理由
私がこの本に出会ったのは、小学校の教壇に立ってからすでに二年が経とうとしている頃でした。今でも、あの時感じた「なぜもっと早く出会わなかったんだ!」という悔しさは忘れられません。
著者のハリー・ウォン・ローズマリー・ウォンは、アメリカで先生に向けた講演や研修などをして活躍しています。長年の教育に関する研究の中で、成果を上げる教師には3つの大きな特徴があると言われています。ひとつめは、素晴らしい学級経営。ふたつめは、「子どもの成長のために授業を行う」という目的の理解とそれに向けた行動。そして最後に、子どもに対して前向きな期待をもっている、という点です。
この本では、この3つのポイントを先生が日々の教育活動の中で実践するため、研究に基づいた効果的な方法を具体的に紹介しています。
1.新任教師としての心得や方法が書かれている
この本にある、「自分が教わった通りに教えるのは危険」(P.40)、「受け持つこどもたちに違いはないので、新任教師、管理職、指導主事、みな同じ」(P.30)など、学校現場に入る前に読んでいたら、もっといいスタートダッシュが切れていたのでは、と感じます。 わたしが民間企業を経て教師になって一番驚いたことは、自分から学んでいかないと正解が見つからないこと、そして初めて先生になった人でも、会社に例えるならば、"入社"1週目の終わりには30人ほどの"部下"ができる、ということです。もちろん、先生と生徒は上司と部下という縦のつながりではありません。しかし、受け持つ児童の活動が担任の先生に任される比重はとても大きく、教師のリーダーシップや方針(学級経営)は子どもたちの1年間を大きく左右します。ぜひ、学校現場に入る前に読んでみてほしいです。
2.「規律」について改めて考えることができる
教室で成果を出すための規律のあり方や秩序などを含めながら、学級経営のあり方を紹介しています。「学級開きの前にどんなことを計画しておくべきか」、「どのように子どもたちとルールを共有していくか」、など、長期的・計画的に書かれているため、年間の見通しをもつことができます。 現代の教育において、「規律」という言葉はあまりポジティブに聞こえないことがあります。わたしもその一人でした。しかし、実際に学級担任になってからは、規律は町の交通ルールのようなものだと捉えるようになりました。適切な規律の共有は、生徒が安心してアクティブに活動できる環境を整え、すべての子どもたちの成長をサポートする大切なベースになります。あなただったら、どんな環境を子どもたちと作りたいですか?
3.クラスで具体的に実行できる方法が多く書かれている
この本には、学級経営の理論と実践が両方バランスよく書かれています。学級開き初日の自己紹介の方法、こどもたちへの声の話しかけ方、学習グループの作り方、学習理解の把握の仕方、出席の把握の仕方など、1年目から実践できる方法が多くあるのも魅力です。 中には、自分の学校のシステムと少し違ってそのままの方法では実践できないものもあります。これらは、海外の学校システムとの違いを知るきっかけにもなりました。
学校現場に入る前に読むと、具体的なイメージがしにくいものもあるかと思いますが、知らずに現場に入るのと、知ってから現場に入るのでは目の前の出来事の見方が変わるのではないでしょうか。ぜひ、読んでみてくださいね。4月からの新たな航海を、応援しています!
おすすめしてくれた人
山本茜さん
公立小学校教諭。日本の大学からアメリカの大学に編入し、環境教育を中心に学ぶ。帰国後、留学カウンセラーとして働きながら、教員免許を取得。「他者とのつながりを大切に、主体的に生きる人を増やしたい」という想いからTeach For Japanフェロー(常勤講師)として2年間勤務後、現職。
(企画:木村彰宏 / 編集:高野雅子)