「初任者へおすすめの一冊 (2021)」として4月から学校現場で教員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
「『学校』をつくり直す」苫野一徳(著)
おすすめの理由
筆者の苫野氏は本書の中で、「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で」学習する、150年変わらず続く学校のシステムによって、子どもたちに様々な問題が起こっていると指摘しています。
そして、「教育は、すべての子どもに「自由の相互承認」の感度を育むことを土台に、すべての子どもが「自由」に生きられるための“力”を育むためにある。」と主張し、様々な問題を解決するために、学校はこれからどのような方向へ進むべきかを、次の三つの問いを立て論じています。
① 現代社会において「自由」に生きるための“力”は何か?
② その“力”はどうすれば育めるのか?
③ 「自由の相互承認」の感度はどうすれば育めるのか?
そして、この三つの問いに対して、「学びの個別化・協同化・プロジェクト化の融合」という視点から、問題を解決することは可能であると訴えています。
この1年余り、学校現場はコロナ禍の中、新しい生活様式での生活を余儀なくされました。また、すでに小学校では2020年度から実施されている、中学校では2021年度から全面実施される新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現が謳われ、画一的な一斉授業からの転換が図られるようになってきました。加えて、GIGAスクール構想により、一人一台のタブレット端末が配布され、授業スタイルの変化は加速していきそうです。
さらに、イエナプランやPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)などの考えを取り入れながら「学びの個別化・協同化・プロジェクト化」を推進しようとしている自治体や学校も見られるようになってきました。これまで、学校で当たり前として行われてきたことを見直そうという、大きなうねりが全国的な規模で起こっています。 4月から教壇に立たれる先生や、若手の先生には、ぜひ本書を手に取っていただき、「学びの個別化・協同化・プロジェクト化」について知っていただきたいと思います。そして、これまで行われてきた「画一的な一斉授業」からの転換により、教育改革のうねりを乗り越えていってほしいと願っています。
おすすめしてくれた人
中村浩二さん
1970年生まれ。名古屋市立公立小学校教頭
管理職として、「意識改革」と「業務改善」を通し、健康的かつやりがいをもって働くことができる職場づくりを推進。サーバントリーダーシップ、ポジティブアプローチなど組織開発の視点を大切にした学校運営を心掛けている。
「学校の働き方改革」に関するフォーラムや管理職向け研修会での講演多数。2020年6月「全職員が定時で帰る スクールリーダーの職員室革命」を出版。大手販売サイトでは、学校運営部門、学校校長関連部門の2部門で売れ筋ランキング1位を獲得。
(企画:木村彰宏 / 編集:高野雅子)