「初任者へおすすめの一冊 (2021)」として4月から学校現場で教員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川元一(著)
おすすめの理由
うまくいかないできごとに出くわしたときの悩みは、そのできごとを乗り越えるための【やりかた】を先人の知恵を借りることで知り、実際に取り組んでみることで乗り越えることができます。しかし、ただ【やりかた】を知るだけでは、その瞬間の具体的なできごとの解決はできても、今後訪れるであろう、似ているけれど違うできごとへの対処はしきれないでしょう。
きっと、新たに現場に飛び込む方は、日々がそうした「うまくいかないできごと」の連続なはず。その対処は、それぞれのできごとに合わせて【やりかた】を知っていけばいいと思います。もちろん、事前に手数を増やしておくと安心とも言えますけれどね。
ですが今、もうすぐ現場に飛び込むみなさんには、どんなできごとに出くわしても解決の糸口を見いだすことができるような【みかた・かんがえかた】を持っておいてほしいと思います。その舞台があるからこそ、【やりかた】という演技が輝くはずです。
4月から学校の先生になるみなさんは、「他者」にまみれた教室という場を担う一員となるだけでなく、「他者と働く」勤労者の一人として仕事に従事することになります。自分ではない他者と一緒に学びを営むことに学校の意義があるとすれば、そのことを児童生徒たちに伝えることが、役割の一つかもしれません。と、同時に、職員室の一員として、自分が他者とともに仕事をするなかで、様々な「溝」を乗り越えて、成果を出していくことが求められます。
あなた自身が、児童生徒に対してか、はたまた同僚に対してか、「なんでわかってくれないの」と思うこともあるでしょう。あるいは、児童生徒どうしが・同僚どうしが「なんでわかってくれないの」となっているのを目の当たりにすることがあるでしょう。そういうとき、本書の【みかた・かんがえかた】が【やりかた】の効果を高めてくれることでしょう。
私が、企業人事とNPOプロボノの副業を経て気づき、教員に転職してからも心がけてきた「わたしとは違うあなたと、いっしょにうまいことやって、だれかに役立つことをする」という考え方を、見事に整理していることが、私が本書をみなさんに勧める理由です。
おすすめしてくれた方
遠藤忍さん
認定NPO法人Teach For Japan 7期フェロー。福岡県飯塚市にて中学校英語の講師。1988年生・茨城県古河市出身。
2013年に慶應義塾大学SFCの大学院を修了。その後2019年1月まで株式会社マクロミルに勤務し、データ分析・人事(人材育成・制度設計・新卒採用)を担当。満を持してTFJフェローとなり、プログラミング教育・授業へのICT導入・農業ビジネス体験(実習とビジネスプランづくりの両輪)・生徒会活動の刷新を図る。一方で、現場に入り、学習規律や授業設計、学力向上で太刀打ちできない感覚を覚える日々に遭遇し、教師の偉大さと自分の至らなさを思い至りメンタルブレイクを起こしかける。
うっかりこんな経歴を歩んだので、「もっとちがうフィールドで活躍できるかも」と思い、国家公務員経験者採用にチャレンジするも、試験合格後に某省の官庁訪問で撃沈。自身の自己顕示欲にまみれている在り様を改めて痛感し、現在はキャリア迷子。「大きなインパクトを残したい」と思っているが、その実そこに至れていないという、残念な感じ。それでも、「この生きづらい世の中で、勇気と気づきがまだ見ぬあしたを切り拓く」というビジョンの実現のため、「学校と社会をなめらかにする」をミッションに掲げ、もがいている。
こうした葛藤を長々とブログに掲載するのが趣味→ https://enshino.biz/
(企画:木村彰宏 / 編集:高野雅子)