「初任者へおすすめの一冊 (2021)」として4月から学校現場で教員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
「自由への手紙」オードリー・タン (著)
おすすめの理由
この本で、オードリー・タンは次のようなことを言っています。「人はみな一人ひとり独自の行動規範をもっているという『違う人』でもあります。違いを認め合い、さまざまな要素が掛け合わさることで、私たちは物事をそれぞれ違った新しい角度から見るようになります。見ることができれば、関心をもち、大切に思うのではないでしょうか。」(P155)。色々な価値観の子供がいて、それぞれの価値観を認められるクラスだからこそ、違った角度で物事が見られるようになるのだと思います。
ただし、価値観の相違というだけで許されないこともあります。オードリー・タンは、こんなことも言っています。「完全な合意などない。一枚岩の向こうで、自分を殺して、ひっそりと息を潜めなくてもいいのです。『こんな感じでいこうよ』そんな大まかな合意で進んで行けば、よりたくさんの人々と共存することができるようになり、より多様性のある文化を実現することができます。」(P157)。完全な合意は必要ありませんが、大まかな合意は必要だということでもあります。その大まかな合意は、例えば「人の嫌がることはしない」ということだと思います。一枚岩のクラスがよいクラスなのではありません。一人ひとりが安心して過ごせるクラスがよいクラスなのです。そして、結果として、まとまりが出てきたり、お互いへの尊重が生まれてきたりするのだと思うのです。
子供も一人ひとり違った価値観をもっています。自分とは全く異なる価値観をもった子供もいます。お互いの価値観を認められるようになれば、お互いを尊重できるようになり、意見を聞き入れることもできるようになります。
自分のもっている「先生らしさ」「学校らしさ」という価値観から自由になり、大まかな合意をもって、子供の価値観を認めていってください。それは、保護者や同僚に対しても同じことが言えるのではないでしょうか。
おすすめしてくれた方
加固希支男さん
1978年東京都生まれ。東京都公立学校を経て、東京学芸大学附属小金井小学校に勤務、現在に至る。日本数学教育学会算数教育編集部幹事。主な著書に「なぜ算数の授業で子どもが笑うのか」「発想の源を問う」(東洋館出版社)「学級経営OVER35」(明治図書)等がある。
(企画:木村彰宏 / 編集:高野雅子)