京都府の公立小学校で先生として働くまあやさんに、このコロナの状況下における学校の動きやご自身の考えをインタビューをしました。
子どもたちと直接会えないもどかしさを痛感
―今日は、急なお願いにも関わらず、お時間を取っていただきありがとうございます。まず率直に、今の学校の状況をどう捉えていますか?
2月までは、子どもたちと毎日関わり過ごしてきたのに、今は状況が大きく変わりました。新型コロナウイルス感染防止のために休校が続き、ほとんど子どもと会えていません。子どもと直接つながることのできないもどかしさを痛感しています。
毎日子どもたちに楽しく、丁寧に関わってきたからこその、まあやさんのもどかしさ。
世間では、オンライン化を進める流れが一気に押し寄せてきましたが、公立学校という大きな組織の中では、情報設備の問題や教育委員会の方針待ちなどの状況があり、多くの先生たちが子どもたちと直接つながることができないという現状にあるのではないでしょうか。
電話をかけることで見えてきたそれぞれの状況
―では、この状況下でまあやさんの学校では、どのように子どもや保護者の方と繋がろうとしているのでしょうか?
勤務校では、4月以降各家庭とつながるために、クラス全員に電話をすることになりました。これまで(インタビュー日は5月6日)に自分のクラス全員を対象に2回ほど電話をしました。
―実際にやってみてどうですか?
当初は、子どもたちの健康確認を目的に行うことになっていました。1件1件丁寧にというより、健康確認程度だったので職員の中から、本当にこんな形で行う意味があるのだろうかと疑問の声が上がっていました。実際に電話をしてみると、家庭の様々な状況がわかります。今の状況を聞いて欲しいとたくさん話される保護者の方。そんなに状況が変わるわけでは無いので、何回も電話をかけてきて欲しくないと思われる保護者の方。そもそもつながらない家庭。など子どもたちが過ごしている状況が見えてきました。共通して言えるのは、どの家庭もお母さんが疲れているなということです。
実際に電話をかけるという選択をされた勤務校。電話をかけることで、家庭の状況や保護者の方の大変さなども見えてくるのでよかったと話されていました。様々な状況のご家庭に効率的にかけていかねばならないということで、電話のマニュアルも作成されたそうです。
子どもの学びも、同僚との連絡もオンライン化は進まず
―では、オンラインの活用については、どのような状況ですか?
正直なところ、公立学校ではすぐにオンラインに踏み切るということはできません。なので、今オンライン授業のコンテンツを先生たちが考えても、公立学校では今後なかなか使えないのではないでしょうか?
確かに、公立学校のオンライン化への流れは大きくブレーキがかかっているという状況です。文部科学省(4月16日時点)の調査によると、休校中または休校予定の1213自治体のうち、デジタル教材を使うのは29%で、双方向型のオンライン指導をするのはわずか5%ということが分かっています。ここには、ニュースなどでも取り上げられているように、学校の脆弱なデジタル環境や、子どもたちの家庭でのデジタル環境が平等にはないという問題がはらんでいます。
―そんな中で、京都府はどのように学びの保障を行う予定なのですか?
京都府は、教材の予習動画や予習プリント作りを学校ごとに分担しています。教育委員会から割り当てられた箇所を各校が動画とプリントを作り委員会に送ります。そして、集められたものを委員会から各校へ送り、家庭へという流れになっています。
どういった方式で子どもたちの学びの保障をするのかというのは、各自治体の委員会や学校によって異なります。どこも子どもたちに学びを届けるために早急に取り組んでいますが、手段が先行して議論され、子どもたちに今、本当に必要なことは何なのかの議論が置き去りにされていることに危機感を覚える時があります。
―学校への出勤は7割減を目標に在宅勤務が進められていますが、在宅下での先生同士のつながりはありますか?
学年のLINEがありますが、ほとんど動いていません。学校に来てからは話すことがたくさんありますが、在宅ではできていないですね。
教員がオンラインツールを使うことに不慣れなため連絡を取り合わないという状況も生まれつつあります。比較的教員歴の短い先生同士が学年を組むと学年の教員間でのオンラインツールの導入は容易と聞きます。在宅下はオンラインになれるチャンスと捉えることもできます。職場でのオンライン飲み会、オンライン職員会議などに取り組んでいる学校もあるので、ぜひ様々な学校がそういう形で取り組めればいいですね。
自分の姿で動画授業に取り組んでみたい
―最後に、様々な制約がある中で今、働かれていると思いますが、もし人間関係や情報環境などのしがらみがなければ、コロナ禍の今、どんな取り組みを行いたいですか?
まずは、自分の姿を動画などで子どもに伝えることかな。今作っている予習動画では、顔出しはNGなのでできないですが、先生の顔を見てほっと安心する子もいるはずです。なので、まだ一方向ですが、そんな動画作りもできるならやりたいですね。そして、各家庭に電話をして分かったことなのですが、意外に本を読みたいけど、本を買いに行けないから読めないという家庭が多くありました。なので、分散登校などになれば、登校日に本の貸し出しなどもやっていきたいなと思います。
まあや先生ありがとうございました。学校という組織の中で、もどかしさを感じながらも日々できることを探して取り組まれているまあや先生の姿に自分自身を重ねられる先生は多くいるんじゃないでしょうか。
もどかしさもあり、どこにこの現状を打破する突破口があるかは分かりませんが、子どもたちのために今できることを考え、しっかり取り組みたいなと改めて思いました。
石橋智晴(インタビュー / ライティング / グラフィック)