奈良県の中高一貫校に勤務されているうどまり先生にインタビューしました。この状況下での初任者へのフォローということをどの先生も問題意識として挙げられますが、実際に初任者として、どのような動きをしているのか聞いてみました。
1つ1つのことに感情を動かしていたら、行動が止まってしまう
―今日は、時間を取ってくださりありがとうございます。早速ですが、勤務校の現状を教えてください。
中高一貫の私立校ということなので、状況は公立校と違う点もいくつかあると思います。まず、県外に住む先生は、勤務は全て在宅になっていて、職場には出勤しません。私は、圏内に住んでいるので、県内の先生は分散出勤ということになっています。子どもたちは休校になっていますが、寮に住んでいる子は一部学校にくることがあります。
―初任者として、出勤してどんな仕事をされていますか?
オンラインでの授業の他に、校務の部長などもやっています。初任者ですが、在宅の先生より出勤している先生にイニシアチブがあり、学校を運営するためには初任者でも分からない中でも動かなければいけません。
―初任者として慣れない環境にいる中で、責任ある立場に立つとなるとご自身の気持ちの部分は大丈夫ですか?
正直、校務は忙しいです。自分の気持ちに正直になり、1つ1つのことに感情を動かしていたら、行動が止まってしまいます。だから、自分の気持ちは置いておいて行動していくしかないと思っています。
特別な状況下の中、自分の感情より学校全体のことを考え動き続けることは並大抵のことではありません。休校下での教師の不安は様々あります。小学館の「今教師が抱えている不安と困惑の本音」調査によると、未履修問題や安全確保の問題などが上位に挙げられています。その根底には、今出来ることが少ない中で感じる無力感があるのではないかと思っています。特に、公立校に務める初任者は尚のことではないかと思います。
参照:https://kyoiku.sho.jp/49270/
うどまり先生のような例は、あまりないかもしれませんが、通常よりも困難な状況下で働く現場の先生へのケアは今、大切にされるべきではないでしょうか。ゴールデンウイークでやっと一息つけました。とおっしゃられていたうどまり先生の忙しさが伝わってきます。
配信授業は働く負担軽減も、初任者にとっては授業力を上げる機会が減る
―オンラインでの授業はどのような形で進められていますか?
国語の教員として、毎日1コマ60分を2〜3コマ担当しています。Zoomを用いて授業を行い、google classroomやformを使って課題のやり取りをしています。
オンライン授業を行うと、旧来の授業とは異なり授業が1回で済むという働き方の上ではメリットがあります。一方で、配信授業にすると、授業の回数を重ねて初任者本人の授業力を上げるという点ではデメリットに感じられるようです。
―授業の中でも、生徒との関係性が大切になってくると思いますが、オンライン授業かでの関係性作りはどのような形で行っていますか?
朝礼や終礼もオンラインで行っています。朝礼に関しては、全員出席してもらいます。出席できていない児童の家庭は連絡を入れることになっています。また、高校1年生なので初めて顔を合わせる子もいます。そこで、ブレイクアウトルームを用いて自己紹介の時間をとったり、昼休みや放課後もオンラインの場を開放し、なるべく普段の高校生活のようにできるよう工夫しています。
教師間のコミュニケーション不足が子どもへのしわ寄せに
オンライン授業下での関係性作りやコミュニケーションの取り方に関する問題は、オンライン授業に取り組んでいる学校の喫緊の課題として挙げられています。うどまり先生のように、生徒の人間関係の把握や、新しい人間関係構築のために授業とは異なる場面でも工夫を凝らしてオンラインの場を開くことも大切になってくると思います。
―実際にオンラインの授業を進めて見えてきた課題はありますか?
課題としては、教師間でのコミュニケーションが対面では取れないことから生じるそごによって生徒に無理をさせているかもしれないということです。この点は、子どもに申し訳なさを感じています。在宅の先生とは、いまだに職場でお会いしたことがなく、サイト上でのみのコミュニケーションになっています。なので、まずは先生たちとのコミュニケーションをとることが必要になってくると思います。また、zoomを使う上では情報モラルの観点からのサポートも必要になってくると思います。急ピッチでオンライン化を進めた弊害がそろそろ現れてくると思うので、予防策としてオンライン上での情報モラルの授業を進めたいと思っています。
メールでもやりとりを丁寧にすることで、生徒の意欲や自主性は引き出せる
―では成果や兆しはどういった点でしょう?
授業に関する質問は、メールで受け付けていますが1日100件を超えます。この返信も忙しいのですが、その中から生徒の方から自主的な添削のお願いが来るようになってきました。オンラインでも丁寧に関わることで、生徒の意欲や自主性は出てくるということに気づけたことは大きかったです。
―これから取り組みたいことを教えてください
本来なら、この時期は体育祭や合宿などがありクラスとして団結できる時です。それができていないので、リモート遠足や男子会、女子会などをオンラインで開いて特別活動の充実を図りたいです。また、部活動も始まっている時期なので、今は二の次、三の次になっていて手をつけられていません。オンラインでの部活は可能性があると思うので、これから取り組んでいきたいところです。
初任者として、激動の時期を過ごされているうどまり先生。その中でも、見えてきた兆しは、これからさらに大きくなっていくでしょう。今、できることに没入されている姿から、子どもたちのためを思う気持ちが伝わってきました。うどまり先生ありがとうございました。
石橋智晴(インタビュー / ライティング / グラフィック)