東京都の公立小学校で教員として働かれている木所さんにインタビューしました。この状況下で、時間を有効に使って学びの質を高められているお話です。
直接卒業式に出られない5年生から6年生へ「手作り大漁旗」
―お久しぶりです。なかなかお会いできていなかったので、こういう形で話すことができて嬉しいです。最近は何をしていますか?
普段よりも、時間ができたから家族との時間を大切にしているよ。子どもと一緒に過ごしたり、奥さんとの時間を大切にしたり、ランニングをしたりしてるかな。
―家族を大切にされる木所さんらしい時間の使い方ですね。休校になってから、学校での時間の使い方はどうですか?
3月に休校になったときには、5年生の担任だったんだ。5年生の3月って子どもたちがグーンと成長する1ヶ月なのに、その期間がなくなるのは正直、嫌だったね。学年の先生と話して、最後の1ヶ月を目指してやったからこそ、チャンスをなくすのはもったいないと感じていたよ。その中でも、5年生が成長でき、卒業する6年生に何かできないかな?と思って学年の先生たちと話していろいろ取り組んでみたんだ!
―どんなことに、取り組んだのですか?
まずは、卒業式用の大漁旗作り。感染拡大防止のために5年生が卒業式に出られないから、何か6年生が喜ぶものを渡せないないか?と思って取り組んだよ。密になることは避けて、教室の前で、いろんな学年の子どもたちを誘って、模造紙数枚ぶんを貼り合わせた大漁旗を作ったんだ。作ったものは、6年生に渡したんだけど、卒業式でも使ってくれたよ。他にも、胸飾りの代わりに、6年生の卒業式の椅子に5年生が手書きで名前を書いておくなどもできたかな。
―僕も、6年生担任だったので痛感しますが、あの状況下で本当に心のこもった取り組みをされていますね。なぜ可能だったんですか?
学年主任の先生が本当に素敵な先生で、学年でいろいろ話していたからだと思うよ。学年の先生とのつながりがあったからこそ、短い時間で子どもたちと話して取り組めたんじゃないかな。
学年団の中での意思疎通。何のために、どんな取り組みをやるのか。そこを日々、話され関係性を気づいていたからこそ迅速で丁寧な取り組みがあの中でもできたのではないでしょうか。
在宅の時間で学んだことを先生たちと共有
―先生たちのつながりが素敵ですね。今年に入って、学年も変わられたと思うのですが、変わってからはどうですか?
先生たちとのつながりで言えば、歓送迎会できていないのは寂しいね。仕方ないことだけど、新しく入ってきた先生とのつながりをどういう風に作っていくかって大事だと思うよ。それに、初任の先生のフォローもなかなかできていないかな。
どの学校も、従来とは別のやり方で新しく着任された先生たちとのつながりを作る方法を模索中です。Zoomを用いたオンライン飲み会を職員間で行うところもあれば、Zoomで自己紹介兼職員会議をするところもあります。どういった形であれ、先生たちって職場の中での関係性を大事にしたいと考えているんですね。
―在宅勤務も進んでいますが、在宅中って先生たちと連絡を取り合うことはあるんですか?
うちの学年は、学年のLINEがあって、頻繁に連絡を取り合ってるよ。時間があるから、それぞれにテーマを決めて自宅で学んでいるね。それぞれに学んだことを共有しあうから、自分にとっても刺激になるし、在宅勤務をさぼれないよね(笑)。係活動と当番活動の違いは?って問いがきたらそれぞれに考えて送ってみたり、分からなかったらどんどん調べてみたりしながら進めてるよ。これまでに取り組んできたこととをまとめて共有することもあるね。だから、学びの質はかなり上がったと思う。
在宅中の取り組みとして、
(1)研鑽を深めるための読書
(2)授業案・教材作り
(3)新しいスキルの獲得
などが挙げられますが、それを学年で共有しながら進めるという点がつながりを大切にし、楽しみながら進めたいという木所さんらしい取り組みだなと思います。ちょっとした工夫で在宅中でもつながりを作りながら取り組むことができそうですね。
参照:https://kyoiku.sho.jp/46848/
授業動画作成を進めつつ、つながりを持てるコンテンツを
―子どもたちのつながりはどうですか?
4月当初に15分ほどの分散登校があっただけかな。登校日に名前を呼べたのは良かったから、これからも無理のない範囲で保護者や子どもとつながりを持ちたいと思うよ。
―この状況でつながりを持つことは、繋がり合うツールがないと難しいと思うのですが、勤務校はどういう風な取り組みをされているんですか?
まず、文京区は申請さえすれば、デバイスやルーターの貸し出しを家庭に対して行っているよ。いち早く取り組んだ自治体のひとつじゃないかな。企業と行政が連携して行ってるみたい。それに一部の小学校では、先行してオンライン朝の会もやってる。だから、文京区全体の雰囲気はよくて、うちの学校もオンラインでつながることの許可さえ降りれば、僕はすぐにでもやりたいね!
―そうすると、オンラインでの授業の準備なども進んでいるんですか?
動画作りはすでに行ってるね。条件としては、1動画10分程度で、教員の顔出しはNG。音読の授業とかを僕も作ってみたよ。でも、オンラインでの授業作りも大切だけど、先生と子ども、子どもと子どもがつながるようなそんなコンテンツを作る方がもっと大切だよね。みんなでやると面白いね!をオンライン上でも感じてもらえなければ、学校が存在する意味がなくなっちゃう気がするんだ。
インタビューの随所に出てきたつながりという言葉。木所先生が、子どもや先生や保護者との関係性を如何に大事にしているかが伝わってきます。つながりを大切にできれば、個人としての取り組みではなく、その学校全体としての取り組みが迅速に進んでいきます。緊急事態だからこそ、学校としての早急な取り組みが求められると思いますが、そのスピードを加速させるのは普段からの丁寧なコミュニケーションによる関係性の深さだと感じました。木所先生ありがとうございました。
石橋智晴(インタビュー / ライティング / グラフィック)