2022年にカタリスト Labで4回連続講座として実施した『校内研修のミカタ※』。
主に研究主任など、学校内の研修や研究に携わる先生方約20名にご参加いただきました。
一方的に教える形を取らない大野睦仁さんの講座では、先生方が主体的に参加されている様子が伺え、参加者同士のコミュニティも自然と形成されているようでした。
一方、研究主任というポジションに関する情報、周囲に相談できる環境はまだ少なく、悩んでいる先生方が多いこともわかりました。
今回、その参加者の一人、あおのりさんに、参加にいたるまでと参加後の今、ご自身や学校内でどんなことが起こっているか、約1年に渡る様子をレポートしていただくことになりました。
成功事例としてではなく、プロセスの共有にチャレンジしてくださったあおのりさんの1年の軌跡が悩んでいる先生方に届いたら嬉しいです。
※『校内研修のミカタ』の詳細はこちら。
2022年度より少しでも前へ
2023年が明けて。かたりすとlaboは旧年中に全ての講座が終了しており、そのため私自身が定期的に自分の取り組みをふりかえる場というものはなくなっていました。
それでも大野先生をはじめ参加されていた先生方が話されていたことやその中で共有することのできた各校の研究研修の現状などを思い返して、私は自分自身の来年度(2023年度)に向けたチャレンジ(自分なりのテーマ)について考えていました。
2023年度、自分なりの大きなテーマ、それは、
「(今年度よりももっと)先生方が自立的に学校づくり(子ども理解、授業づくり、研究研修を含めた取り組みなど)へ関わりたくなるような学校を。(今年度よりももっと)先生方が働きやすい環境を。」
です。2022年度と大きく自分自身のテーマを変えたわけではありません。今よりも少しでも前へ、少しでも深まりある取り組みへ。そんなイメージでした。
学校見学の受け入れが良い振り返りに
しかし、蓋を開けての3学期。諸々の事情による校内体制の変更や自分自身の業務調整のまずさから研究に対して新たにエンジンをかけることができませんでした。
そんな時期、本校のこれまでの取り組みをふりかえることのできる機会が訪れました。それが本校への学校訪問です。公開研究会以来、本校の研究体制や具体的な授業の様子、これまでの研究の積み上げについて、嬉しいことに県内外からいくつもの訪問依頼が来ていたのです。私にとって、この来校者のアテンドの中で本校のこれまでの取り組みを相手に伝えることは、良い振り返りになりました。先述したように、かたりすとlaboのような場が失くなっていたこの時期、自分が自分たちの取り組みをふりかえる時間を持てていませんでした。学校見学の受け入れは、私にとって本当にありがたいものでした。
その中で、学校訪問に来られたある学校の校長先生が、『なんだか、先生方が楽しそうですね。』と『いつもあんなに先生方が話し合われているんですか?』と質問されたことがありました。これは私にとって嬉しい質問でした。来校されたほとんどの方がいわゆる本校の授業での取り組み(特に自立的な学びを目指して挑戦していた自由進度学習による算数。国語科におけるワークショップ型の学びである作家の時間や読書家の時間。同じくワークショップ型の授業として構成した社会科の授業)について質問される中、その校長先生は本校の先生方の表情や授業外の動きを見てくださっていました。
教員同士のコミュニケーションがチャレンジの土台に
本校の教員が授業間の5分休憩の時間、次の授業の準備について話している姿や子どもたちの様子について笑顔で情報共有している姿、放課後の会議で対話している姿。本校の教員は本当によく話をしている、聞き合っているなと私自身もその話量の多さを2学期の中頃から感じていました。
このコミュニケーションの量が研究や日々の授業改善へのきっかけになっている。ということをその校長先生にお答えしました。
事実、より良い授業をより高いチャレンジを目指して、本校の教員は11月の公開研究会後も動き続けていました。それは決してやらされているものではなく、教員自身が課題感を持ち、課題の解決に向けて試行錯誤を繰り返し続けていこうとする気持ちの表れでした。そして、その土台の部分には、やはり互いを繋ぐコミュニケーションの量があったのだと先述の校長先生からの質問で確信したのです。まさに日々のコミュニケーションが今年度の本校のチャレンジを支えていたのです。
『探究の時間』を時間割の中に位置づける提案
そんな教員同士のコミュニケーションを土台にして、来年度(2023年度)はどんなチャレンジができるだろう?
そんなことを考えながら職員会議に来年度のチャレンジを提案したのが2023年2月。その提案とは『探究の時間』(子どもたちが自分の興味関心について調べ学び語る、そんな探究的な活動を個人で進められる時間。)を時間割の中に位置づけてみては、というものでした。本校の先生方と今年度培ったコミュニケーションを元にすれば、『探究』という予測不可能な物事や答えのない課題についても向き合っていけるのではないか、という自信のようなワクワク感があった私は密かに温めていたこのチャレンジを言葉にしたのでした。
もちろん、中には探究という言葉を聞いても具体がイメージできない、と言った声も聞かれました。それについては、これから大人がみんなで勉強していきましょう、と全体に伝えました。
職員室にいくえにも張り巡らされた関係性の糸
かたりすとlaboで、ある先生が、「研究主任がたくさん勉強したことをみんなに教える形態をとっていると周りの先生方の研究に対する熱が上がらない。どうしてもみんな受け身になっていく。」とおっしゃられていました。
その言葉を思い返しながら『みんなで』探究について考えていく、模索していくことにしました。実際、自分も探究については不勉強な部分が多かったので周りの先生方と一緒につくっていくというのが本音でした。
年度末、教頭先生と話している時に職員のコミュニケーションの話になりました。そこで教頭先生から
「うちの職員室で先生たちの関係性を線で結んだとしたら、ぐちゃぐちゃ〜って、何本も入り乱れてみんながみんな繋がってる感じだろうね。笑」
ということを言われました。確かに、そのときの職員室に関係性の糸を可視化したなら、そんな状態だろうなと頷きました。
いくえにも張り巡らされた関係性の糸、その繋がりがあればこの職員室はもっと大きな挑戦に向かっていける。そんなことを期待させてくれた2022年度末でした。
<執筆者プロフィール>
あおのり
長野県公立小学校教諭
昨年度から校内研究・研修を担当する“副主任”に。主任と力を合わせて研究・研修の場づくり、先生方のチャレンジの可視化、授業づくりへのアドバイス(一緒に悩み一緒につくっています)などをおこなっています。
編集:たかのまさこ