「初任者へおすすめの一冊 (2023)」として4月から学校現場で教員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
「図工準備室の窓から 窓をあければ子どもたちがいた」岡田 淳 (著)
おすすめの理由
初任の先生は、これから「ちゃんと」先生をやっていけるだろうかとか、「ちゃんと」学級を作っていけるだろうかとか、そんな気持ちを抱えている方も多いだろうなぁと思う。でもそれは大人も子どもも結構苦しいもので、子どもと一緒にどれくらい学校生活を楽しめるかを大事にしたい。それに学校の「ちゃんと」が本当に「ちゃんと」しているかは結構怪しい。本屋に行けば、その本を読めばなんだか学級がまとまりそうな本がたくさん並んでいるので、僕はこの本を紹介しようと思う。
この本は作家であり、公立小学校の図工教員だった岡田淳さんが書いたエッセイである。舞台は学校。初任の頃の話、初めての展覧会の話、授業での子どもとの小さなやりとり、図工の授業のことなど。子どもとのやりとりはもちろんたくさん出てくるのだが、大人同士のやりとりも面白い。今はなかなか出会えない、古き良き職員室だなと思うこともたびたびある。あらためて、学校にはいろんな人がいるから面白いんだよなと思わせてくれる。この本を通して、岡田淳さんがどんな風に学校に居たかがよくわかる。そしてそれは、自分が今どんな風に学校に居るのかを問い直してくる。教師の仕事は楽しさもたくさんあるが、苦労もたくさんある。それでも自分の居場所から子どもと関わり、歩いていくしかない。そこから見える子どもたちの姿は輝いている、そう思わせてくれる一冊だ。
そしてもう一点、印象的だったことを紹介したい。それは岡田淳さんが、図工の目標として、絵を描いたりものを作ることを好きになることに加えて、「あの人やるなと思えること」「自分もやるぞ。と思えること」を挙げていることだ。そのために、岡田淳さんは、お互いの作品を見合うことを大切にしてきたという。本の中では、お互いの作品の良いところを見つける授業が紹介されている。子どもたちは、一生懸命、仲間の作品の良いところを見つけてスピーチをする。表現を認め合う教室だったら、きっとまた表現しようと思えるだろうなと思う。そして、表現すること自体が子どもの幸せにつながっていくんだろう。
最後に、「◯◯準備室の窓から」と自分の居場所に置き換えて(準備室がない先生もいるだろうが)、子どもたちをどんな風に眺めているか想像してみてはいかがだろうか。きっといつもの日常が一つの物語として浮かび上がってくるはずだ。
おすすめしてくれた方
井上太智さん
軽井沢風越学園スタッフ、東京都での教員経験を経て軽井沢風越学園へ。最近はプロジェクトの学びについて考えています。
(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)