「初任者へおすすめの一冊 (2022)」として4月から学校現場で教職員として働く方向けに、様々な分野で教育に携わる先輩方から、おすすめの1冊をご紹介いただきました!
おすすめの書籍
おすすめの理由
より少なく、しかしより良く
今回ご紹介するのは、ビジネス書における大ベストセラー『エッセンシャル思考』です。
この一冊を端的に表したのが、『より少なく、しかしより良く』というフレーズです。
この仕事の深さ、広さは無限大です。よって、突き詰めようと思えばいくらでも突き詰めることができます。周りのさまざまな実践者の発信を見て、あれもやりたい、これもやりたいというモチベーションが湧き出てくることはとても良いことです。
しかし、残念ながら誰しもに与えられた時間は24時間と定められており、極めて有限性の高いものだと言えます。だからこそ、多忙を極める学校現場においては、より少ないエネルギーで、より良い成果を出せるような選択と集中というアプローチを考える必要が必然的に生じてきます。このような考え方が、今回ご紹介するエッセンシャル思考の考えの根幹となるものです。拙著においてもエッセンシャル思考をベースとした提案をし、一定の支持を受けることができました。
白と黒の間には無限の在り方が広がっている
今回の記事を読まれている方は、おそらくSNS等を通じて学校現場の光や闇について知っている方が多いと思います。そういった場では必ずといって良いほど『バイアス=偏り』が生じています。具体的に言うと、アンテナを張って常々情報を得ようとしているような層がSNSには多く、そういった教員の人たちは概ねエッセンシャル思考のような在り方にポジティブな捉え方をしています。しかし、学校現場では多くの場合において、非エッセンシャルな在り方、要するにとことん時間をかけて成果を出そうとするアプローチが多くを占め、賞賛されるシーンが多いです。
ここで意識する必要があることがあります。それは白と黒の間には無限の在り方が広がっていると言うことです。より少なく、しかしより良くというエッセンシャル思考という白の在り方と、ひたすら残業をして成果を出していく非エッセンシャル思考という黒の在り方の二択ではなく、あくまでもその間のどの色を取るかは人それぞれだということです。
そして、そのそれぞれの色を尊重することが大切です。盲目に自分の色を信じ、他の色を否定することは分断を生むだけで何もプラスは産みません。現場で最も生産性を下げるものの一つは『分断』です。これを働き方という具体だけで捉えず、抽象化して全ての学校での事象にこれを当てはめて考えることが、これから加速度的に変化していくであろう学校現場を担う皆さんには大切にしてほしいことです。
みんなが持続可能な働き方をしつつ、分断なき優しい世界になることを願っています。日本の教育の希望である皆さんと共に少しでも良い世界にしていくことを楽しみにしています。
おすすめしてくれた方
坂本良晶さん
民間から教育へ越境して11年目、今年度は『持続可能性』を念頭に置いた教育の在り方について考える。 著書に『全部やろうはバカやろう』等。
(企画:木村彰宏 / 編集:たかのまさこ)
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