Story
「置かれた場所で咲きなさい」
初任校の校長先生の口癖。
彼女はとてもストイックだった。
正月以外は学校にいるような、そんな人。「仕事ばっかりで、子どもたちには寂しい思いをさせてしまってね」とよく話していたのを覚えている。
私は、彼女に憧れてがむしゃらに仕事をしてきた。
やりたいことを言うのはわがままで。
他人に迷惑をかけるくらいなら自分を犠牲にする。
そんな風に仕事をしていたら、いつの間にかしんどくなっていた。
適応障害の診断を受け、休職。
今まで積み重ねてきた努力は水の泡。
これからどうやって生きていけばいいんだろう。
思えば、これまで自分のキャリアを考えることを放棄していたんだと思う。
とりあえず任された仕事を頑張れば、誰かがレールを敷いてくれるという感覚。
退職して、ようやく「どう生きたいか」を考えることができた。
学校を離れた今、先生という仕事の素晴らしさを改めて感じるし、学校だからこそできることがあるって思える。だから教育を諦められないし、先生にまた戻りたいと思う。
10年後、先生をしているかもしれない。
でも、最初に先生になった時よりも、ちょっとわがままに生きていたい。
プロフィール
高村ミチカさん
元教員ライター・編集者
東京学芸大学卒業後、公立小学校教員を11年経験。休職期間を経て2021年退職。現在はフリーランスライター・編集者として活動中。教育の現場で培った傾聴スキルや言語化スキルを生かし、顧客の想いを最大化する企画・編集を行う。出版業務に携わる他、教育のオープン化を目指す(株)クジラボでイベント企画やメディア編集に関わる。
編集後記
「どう生きたいか」という問いに出会うことができた、退職というきっかけ。そしてそれがあったからこそ「先生にまた戻りたい」と思うことができたミチカさん。10年後、ちょっとわがままに楽しそうに先生をしている姿が浮かびます。今苦しい人も一度立ち止まってみると「どう生きたいか」が見えてくるかもしれません。
(編集/たかのまさこ)
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